参院選大敗で自民党が「民主党化」する? 「石破退陣」の混乱で近付く自民が“与党の資格”を失う日

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「民主党化」する自民党

 今回、世論には「真っ当な人たち」が予想以上にいるのは分かりましたが、自民党内はどうでしょうか。

 率直に言って今の自民党にはまとまりがない。このようなことは安倍元首相が健在だったときには考えられないことでした。与党である以上は政治を前に進めていかなければなりませんから、最後にはまとまって一致しなければならない。しかし、それが裏金問題に前後して、党内で妥協点が探れなくなってしまっているように思えます。

 これは、裏金問題によって派閥が解体され個々の議員を領袖がグリップできなくなったということなのでしょう。ただ、問題なのはみんな好き勝手言う割に旗振り役になって党の今後の在り方を議論しようとする人がいないことです。今回、一部の議員が石破首相退陣を迫る一方で、党内改革をしようという機運は高まらないのが良い例だと思います。

 これでは「真っ当な人たち」の支持は得られません。自民党は民主党政権を非難しますが、今の様子を見ていると、2010年の参院選で大敗した民主党内から当時の菅直人首相の退陣の声が上がった状況とそっくりです。自民党は今まで圧倒的な与党であることでまとまりを維持してきましたものの、ここにきて議席を保てなくなり、固まって意思決定ができなくなっています。

 力を失いつつある自民党は「民主党化」して与党としての機能が弱まっている。与党は右派から左派まで幅のある政策や意見を出せなければいけません。原発政策で言えば、世論には“原発怖いね”という人もいれば、“こんなに暑くてエアコンで電気使っているのに原発稼働させなくて大丈夫か”という人もいますから。例えば、世間の3割の声しか吸い上げられない党では世論を反映した政治はできません。

 今はまだ自民党の中にも原発を推進する議員も反原発を主張する議員もいます。ただし、今後自民党の力が弱まっていく中で、主張に幅を持った与党として「キャッチオールパーティー(包括政党)」で居続けられるのかは未知数です。

 立憲民主党は党として反原発に振り切っているとはいえ、政党支持率は7~8%程度です。支持率が低迷する背景には、原発推進派も反原発派もいる世論の意見を十分に吸い上げられる“幅のある”政党としてみなされていないことがあるのではないでしょうか。自民党も主張に幅を持った政党でなければ、与党として支持を受け続けることは難しいと思います。

組織票の落日とポピュリズムの台頭

 自民党の力が弱まっているだけならまだしも、さらに連立を組む公明党の力も弱まっている。今回の参院選以前からではありますが、公明党や共産党などの組織力に翳りがみえてきています。

 もちろんここには支持層の高齢化という原因もありますが、一番の問題は新たな支持者が入ってきていないことです。基本的に公明党や共産党には先祖代々党員だった人しか入らない「限界集落」状態。こうなれば支持者はジリ貧です。

 自民党は日医連などの組織票があります。これは自民党についているというよりは与党についている。自民党が野党に転落した時に同じように支持し続けてくれるかはなんとも言えません。

 組織票という安定した支持母体の影響力が弱まることで、その代わりにポピュリズム的な主張で票を集めようとする機運が高まる可能性が考えられます。石破退陣への世論の反発には「真っ当さ」を求める雰囲気がありました。このような雰囲気があるうちは、安易にポピュリズムに流れることなく有権者も冷静な判断ができると思います。ただし、治安の悪化や社会への不満感によりこうした「良質な同調圧力」が失われた時にはポピュリズムに雪崩を打つかもしれない。

 自民党からすれば、公明党の組織力が弱まり、参政党と言う対抗馬も出てきた。自民党は与党としてどうあるべきなのか、これまで以上に問われていると思います。

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