松本潤主演『19番目のカルテ』が教えてくれる 日本の医療と我々には「森」の視点が欠けていないか

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松潤の笑みと落ち着いた問いかけの意味

 嵐の松潤こと松本潤が演じる徳重晃医師のやわらかい笑みと、落ち着いてゆっくりと紡がれる言葉に包まれると、どこか癒された気持ちにさせられます。通りいっぺんの質問を受け、こちらの話は軽く受け流されたまま薬が処方される、という対応に慣れ、医者とはそういうものだと、ある種あきらめていた身には、とても新鮮です。TBS系の日曜劇場『19番目のカルテ』の話です。

『19番目のカルテ 徳重晃の問診』(‎コアミックス)というマンガが原作のこのドラマ、7月13日放送の初回が世帯平均視聴率11.4%で、参院選特番をはさんで7月27日の第2話が11.6%。8月3日放送の第3話が10.0%でした。今クールのなかでは唯一、2桁をキープしています。

 病気は多くの要因が絡み合って発症することが多いようです。ところが、現代の専門分化した医療のもとでは、医者に全体を診てもらえてないように思え、不安な人も多いのではないでしょうか。その不安は、案外、当たっている気がしますが、そこで出番なのが、松潤演じる「総合診療医」の徳重です。たんに病気を診断し、治療するだけでなく、「人生」にまで寄り添いながら患者の全体像を把握し、より本質的な治療を可能にします。あるいは、患者の病気に対する意識を前向きにします。

「総合診療」とは「臓器別診療」の対立概念だそうです。現在、日本で行われている医療は原則として臓器別診療で、たとえば消化器内科、呼吸器内科、循環器内科……などと臓器別に細分化され、スペシャリストが診ています。こうした既存の専門科は全部で18あり、総合診療が「19番目」に当たるというわけです。

 もちろん、臓器のスペシャリストだけで事が済む場合も多いのだと思います。しかし、病気には往々にして心理的な背景や栄養学的な背景もあって、それは家庭環境に起因していることも多いから、患者の「人生」に寄り添うことも、ときに必要だということです。総合診療の第一原則は、患者の話を聞くことだそうですが、たしかに、患者の背景がわからなければ、本質的な治療の方針も立てられないでしょう。

 しかし、意外にも(失礼!)適役だった松潤のあの笑みと落ち着いた問いかけを前にしたら、患者としてもしっかり話すことができて、本質的な「背景」を見つけてもらえそうな気になります。

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