えっ、いまの気温は35度? 50度近くあるのでは…実は「日本でもすでに50度に達している可能性はある」と識者 謎を解くカギはアスファルトの表面温度

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シンガポールより暑い日本

 中学の地理では「やませ」を習う。東北地方の太平洋側では夏に冷たく湿った北東の風が吹くことがある。冷害や飢饉の原因となってきたが、立花教授は「地球温暖化の影響で、冷たいやませはもう吹かないでしょう」と予測する。

 さらに日本を太平洋高気圧が覆うと、下降気流が発達する。上空の空気は地表に近づくにつれ、気圧の関係で圧縮されて熱を持つ。「夏の間、日本列島は巨大なドライヤーで熱風を浴びせられているようなもの」(立花教授)というわけだ。

 偏西風の蛇行と高気圧から生じる下降気流の直撃で、日本各地の気温は熱帯よりも暑くなっている。フィリピンのマニラやシンガポールの最高気温は30度前後。「地球で起きる異常気象は、世界のどこよりも日本に悪影響をもたらす」と立花教授は指摘する。

「猛暑の常態化で憂慮すべき問題は多岐にわたりますが、ここでは2点だけ指摘します。1点目は熱中症による死亡者の増加です。2024年に熱中症で亡くなった方は約2000人と発表されていますが、これに熱中症関連死は含まれていません。猛暑により心臓病が悪化して亡くなられても、死因はあくまでも心臓病なのです。今後20年間のスパンで、温暖化対策を一切しない場合、夏の最高気温が45度に達するのは確実視されています。45度に上昇すると熱中症で亡くなる方は年間1万人に増え、熱中症関連死は年間5万人に達するという推計があります」

コメ問題と首都移転

 2点目は農業に与える悪影響だ。立花教授は「特にコメ栽培に与えるダメージは相当なものがあります」と指摘する。

「令和のコメ騒動で、やはり日本人にとって大切な主食はコメであり、その価格が上昇しただけで大変な騒ぎになると浮き彫りになりました。国家が食糧危機に直面すると、国民の言動が先鋭化するという指摘もあります。戦前の日本人はコメをたくさん食べたので国内生産だけでは足りず、コメを輸入していました。太平洋戦争は南方の資源だけでなく、コメの確保も目的だったと歴史家が明らかにしています。そして日本のコメは冷害に強い品種改良なら長い歴史を持っていますが、猛暑に強い品種はまだ少ないといわざるを得ません。日本の人心を安定させるためにも、コメの猛暑対策は喫緊の課題でしょう」

 地球温暖化を食い止めるにはどうしたらいいか、立花教授は「まずは何よりも国民的な議論が必要です」と訴える。

「私に考えがありまして、政治家に『猛暑対策で首都移転を行うべき』と国会で審議してほしいのです。これまで経済的な観点から首都移転は議論されてきましたが、温暖化対策の視点は初めてでしょう。きっと賛成派と反対派で激しい議論が行われるはずです。そして、それこそが目的なのです。激しい議論を通じ、日本人は温暖化に関する知識を増やし、認識を深めるでしょう。もし首都移転が実現すれば、東京は人口や車両量、クーラーの排熱などが減少するので多少は涼しくなるはずです。さらに移転した首都では涼しい気温で国会が開かれますので、国会議員や官僚は快適に仕事ができるはずです。生産性の上昇が期待されます」

 第1回【猛暑で最高気温40度が連発、30年後には50度に達する可能性はあるのか 異常気象の専門家は「外国の50度より、日本の40度のほうが体感温度は高い」と指摘】では、日本の最高気温40度は外国の50度より体感気温が高いという理由や、四方を海に囲まれたメリットとデメリットについて詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

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