夏の甲子園で本当に起きた“珍サヨナラ劇” まさかの凡ミスで敗退 「球場全体が敵のように…頭がパニックになった」と悔やむ球児も

スポーツ 野球

  • ブックマーク

上を向いて胸を張っていけ

 3対3の同点でタイブレークとなった延長10回裏、中京大中京は9番・村上遼雅の犠打が敵失を呼び、無死満塁のチャンス。次打者・西村友哉は、前進守備のセカンド・錦織拓馬の後方に飛球を打ち上げた。

 一塁塁審がインフィールドフライを告げ、1死となったが、右翼方向からの強い浜風が吹くなか、バックしていた錦織は打球に追いつきながら、外野の芝生手前で落球してしまう。

「もしかしたら落とすかもしれない」と考え、ベースに足を乗せながら本塁方向に体重をかけていた三塁走者・前田識人は、ボールがこぼれるのを見ると、果敢にスタートを切った。錦織の必死の送球も間に合わず、無情のゲームセットに……。

 好判断で「人生初」のサヨナラのホームを踏んだ前田は「チームの無敗記録(前年秋から公式戦28連勝)を有終の美で飾ろうと思っていた。本当に無我夢中で走りました。今後の野球人生に向けて、とてもいい経験になりました」と振り返った。

 一方、9回から途中出場していた錦織は「焦ってグラブに当たってしまった。大事にいき過ぎた。ここまで試合を作ってくれた仲間に申し訳ない」と悔やみに悔やんだが、試合後はチームメイトに「上を向いて胸を張っていけ」と励まされていた。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。