夏の甲子園で本当に起きた“珍サヨナラ劇” まさかの凡ミスで敗退 「球場全体が敵のように…頭がパニックになった」と悔やむ球児も
連日球児たちの熱戦が繰り広げられている夏の甲子園だが、時には「まさか!」と思わず目が点になるような珍しいサヨナラゲームが見られることもある。過去の大会で本当にあった思いもよらぬゲームセットの瞬間を再現する。【久保田龍雄/ライター】
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類のない幕切れ
捕球しなければファウルだったのに、ラインギリギリの飛球をキャッチしてしまったために、珍しいサヨナラ右邪飛が記録されたのが、1970年の準決勝、東海大相模対岐阜短大付(現・岐阜第一)だ。
東海大相模の横手投げ技巧派・上原広、岐阜短大付の本格派左腕・湯口敏彦(元巨人)の好対照な投手戦は、2点を追う岐阜短大付が8回に4番・高橋幸広(元近鉄)が左越えに起死回生の同点2ランを放ち、土壇場で試合を振り出しに戻した。
鮮やかな同点劇で勢いづいた岐阜短大付は9回にも2死二、三塁と一打勝ち越しのチャンスをつくるが、ここは上原が踏ん張り、2対2のまま、9回裏、東海大相模の攻撃を迎えた。
この回、先頭の近藤正樹が右前安打で出塁すると、2者連続で送りバントが相手のエラーと野選を誘い、無死満塁とサヨナラのチャンス。そして、次打者・田中秀俊は、右翼ライン際に大飛球を打ち上げた。
何としてもサヨナラ打を阻止したいライト・高橋は必死に追いかけたが、ライン上の際どい打球だったことに加え、一塁手も二塁手も声をかけてくれないので、「ファウルかフェアか判断する余裕がなかった」という。最後はラインをまたぐようにしてキャッチしたが、皮肉にもファウルだった。この間に三塁走者・近藤がタッチアップして本塁を狙う。
強肩の高橋も懸命にバックホームを試み、クロスプレーに持ち込んだが、近藤は捕手・篠田光男のタッチをかいくぐってスライディング。直後、ボールがミットからこぼれ落ち、サヨナラ右邪飛という類のない幕切れとなった。
試合後、高橋は「僕は今でも(あの打球は)フェアのような気がします」と語っている。
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