デビュー60周年の美川憲一、GLAYのTAKURO×B’z松本孝弘の“超豪華タッグ”と奏でる新曲で見せる“新境地” 「まだまだしぶとく、しぶとく生きるのよ~!」
約20分の長編「モンパルナス(完結篇)」はステージ上でウィッグを被って披露
さらに、美川憲一の芸能生活45周年を記念したアルバム『ドラマティック シャンソン~モンパルナスの肖像』(’09年)には、「モンパルナス(完結篇)」という作品が収録されているのだが、本作はなんと19分を超える、シャンソンとミュージカルが融合したような超大作(作詞:杉紀彦、作曲:弦哲也)。
パリで暮らす少女が戦乱の時を経て愛する人を失い、場末の娼婦へと堕ちていく様子を、美川が艶やかな高音から、妖しげな低音まで駆使して演じきっているのだ。これは、美川のバラエティ番組での活躍ぶりや一連の演歌のヒット曲しか知らない人にもぜひ聴いてほしいほどの名唱と言えるだろう(残念ながらCDは廃盤、サブスクも現時点では未配信)。
「これはステージで披露するとき、(CDのブックレットを指さして)こんな風にウィッグを被って、演出の方にご指導いただき、演技をしながら歌っているんですよ。シャンソンを歌うときは、演歌とはまったく切り離して、語るように歌うことを心がけています。この曲は、本当に評判がよかったです。ただ、毎回、20分近く演じるのはちょっと……ね(苦笑)。だけど、このショート・バージョンは今も時々やっていますね」
美川は、ことシャンソンに関しては、難しい曲に挑んだアルバムをリリースしたり、いつものコンサートよりたとえ小規模の場合でも積極的に参加したりと、音楽への熱量が半端ない。60年間たってもその純粋さを失わない心には、もはや神々しささえ感じるほどだ。
最新曲「これで良しとする」松本孝弘×TAKUROの豪華コンビ実現のきっかけは
さらに’24年9月には、歌手生活60周年記念シングルとして「これで良しとする」をリリース。本作は、Spotify第9位にも入っている話題曲だが、作曲をB’zの松本孝弘、作詞をGLAYのTAKUROが手がけたノリノリの歌謡ロックで、デビュー60年にして新たな路線にも挑んでいるのだ。
この曲は、美川が艶やかな中低音で ♪生きてるだけでいいじゃない~♪ と歌う人生応援歌で、途中に入ってくる松本によるギターのフレーズも印象的だ。B’zファンはもちろんのこと、ポップスをこよなく愛してきた全リスナーが聴くべき注目作だろう。それにしても、今回のような他に例を見ない組み合わせが、どうやって実現したのだろうか。
「この曲、人気なんですか。嬉しいです。これは、B’zの松本さんに直接お願いしたんですよ。松本さんと私はロサンゼルスにお家があって、その繋がりで数年前にお会いして。そのときに、“あと何年かで60周年か。ここで何かすごいことをやらなきゃ”と考え、思い切って“曲を作ってもらえませんか?”ってお願いしたら、あっさり“いいですよ”ってお返事してくださって」
“あっさり”とはいえ、昭和の歌謡曲のカバーアルバムも出すほど、美川を含め音楽界の先輩方にリスペクトのある松本だからこそ、快諾したのではないだろうか。ところで、B’zといえば、稲葉浩志のキレのある高音ボーカルが想起される。だからこそ、この曲の歌唱はさぞ難しかったのでは? と尋ねると、
「まったく難しくなかったです。むしろ私をイメージしてくださっていて、すごく歌いやすかった。どういう歌にするかは、数か月にわたって何度か電話で話し合いました。それで、歌詞は松本さんのご提案でTAKUROさんが書いてくださることになって、TAKUROさんとも電話でやり取りして、本当にいい歌になりました」
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