「死刑執行の日は、ドアを蹴ったり、暴れたり」…凶悪死刑囚たちの獄中生活を、身の回りの世話をした元受刑者が明かす
精神の安定を図る
元衛生夫が見た死刑囚の中には改悛している者も何人かはいたという。
「マレーシア系中国人の死刑囚は反省の念は強かったし 、 女子中学生2人を殺害した 死刑囚も作業で稼いだお金を東日本大震災の募金に寄付していました」
それでも現在の死刑囚の処遇のあり方に疑問を感じたという。
「例えば、懲役で服役している人は朝から午後5時まで作業を課せられるのに、死刑囚は基本的に自由な生活です。何もしなくていい。彼等は自主契約作業といって、希望すれば、一袋3、4円で紙袋を折って収入を得ることもできます。中には月に3万円も稼ぐ人もいて、豪華な美術書を何冊も購入している。ところが、懲役の場合、時給5円から10円で始まる。いくら折っても月に500円から2000円ほどにしかならない。死刑囚は月に書籍を12冊購入できるのに、懲役は6冊。懲役には許されないビデオ鑑賞も死刑囚にはある。死刑囚は精神の安定を図る必要があるという理由で、ありとあらゆる面で厚遇されている」
死刑存廃の議論があるが、
「その前にあまりに世間のイメージと異なる死刑囚の生活を知っていただきたい。その上で受刑者の処遇の様々な矛盾や再審制度のあり方を考えてもらえればと思います」
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この記事から12年、記事中の小泉毅死刑囚は、未だ執行が行われず、拘置所で暮らしている。「エヴァンゲリオン」を見た91歳の老死刑囚は、記事の翌年、前立腺がんで拘置所内で病死した。一方、加藤智大死刑囚は2022年に刑が執行され、今はこの世にいない。
現在、日本の確定死刑囚は105名。死刑制度や拘置所での待遇を巡り、さまざまな議論が起きているのは周知の通りだ。多少の変化はあったであろうが、現在の死刑囚の処遇も12年前の上記記事と概ね同様と見られる。彼らの拘置所での暮らしぶりについては、ほとんどがベールに包まれたままなだけに、貴重な証言である。
【前編】では、連合赤軍やオウム真理教元幹部の、リアルな拘置所生活について記している。
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