「死刑執行の日は、ドアを蹴ったり、暴れたり」…凶悪死刑囚たちの獄中生活を、身の回りの世話をした元受刑者が明かす
訴訟資料をすべて捨てる
同じフロアの奥の房には、秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大(30=当時)もいた。2008年、秋葉原の歩行者天国にトラックで突っ込み、3人をはねて殺害し、4人をナイフで殺害した事件である。
「我々は彼のことを“カトちゃん”と呼んでいましたが、とても大人しい人です。クロスワードパズルの本を購入して、房で問題を解いたり、枡目を塗りつぶしてばかりいました。車で事件を起こしたにもかかわらず、カー雑誌もよく読んでいましたね。2012年、カトちゃんは段ボール3箱分の訴訟資料を全て捨ててしまいました。担当官は“本当にいいの?”と何度も確認していましたが、本人は“いい”と。ちょうどその頃、手記『解』を書き終えたばかり。まだ上告中なのですが、執筆が終わったらもういらなくなったということなのでしょうか」
執行への不安
元衛生夫がこのフロアで働いていた期間中、死刑執行は2度あったという。
「執行について、私たちは事前に何も知らされていません。執行の日もいつものように朝食が終わった頃、急に担当官から呼ばれ、”ちょっとお前たち外に出るぞ”とフロアから連れ出されました。“あれ、いつもと違うな。おかしいな”と思いながら、別の作業をして20分ほどしてフロアに戻されました。すると、房の一つはすでに電気が消され、暗くなっていたのです。ここで私たちは“あ、死刑が執行されたな”と初めて気づく。1時間ほどすると、“房の荷物をまとめてくれ”という指示が出ました。房を掃除し終えると、床に塩を撒きました。遺品は引取人がいる場合は渡し、いない場合は焼却処分されます」
死刑執行は他の死刑囚たちも気配で勘づくという。
「私たちに“今日、あったんでしょう?”などと聞かれます。普段は好き放題な生活を送っているように見える彼等もやはり死刑は怖くて仕方がないようです。執行された夜は大変だと聞きました。夕方に死刑執行のニュースが流れると、死刑囚たちは“バカヤロー! どうなっているんだ”と声をあげ、法務大臣の名を叫び、ドアを蹴ったり、暴れたりしたそうです。翌朝、ぐったりした夜勤の職員が前夜の様子を話してくれました。担当官も、翌日、死刑囚たちから執行への不安を打ち明けられて、てんてこ舞いでした」
生への固執
死刑囚は法務大臣が代わるたび、大臣の死刑に対する考え方に強い関心を示すという。
「大臣就任の翌日の新聞に死刑へのスタンスが報じられます。鳩山内閣で千葉景子法務大臣が誕生した時、彼女は死刑廃止論者と伝えられたので、“当面ないな”と死刑囚の一人は言っていました。民主党政権時代は皆、割と安穏としていたように思います。しかし、滝実大臣が執行してから、何人かが急に再審請求の書類を取り寄せていました。日頃、“俺は再審請求はしない。絶対に死ぬ”と言っていると耳にしていた死刑囚がいて、私は“潔い人だな”と思っていたのですが、彼も手に入れたと聞いて、やはりいざとなると生に固執するんだな、と驚いたものです。また、ある死刑囚は2012年秋に共犯者の死刑が確定したばかり。“次は俺の番だ”と騒ぎ、日に日にうつ状態になっていきました」
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