食事に出たウナギに歓喜した「元連合赤軍メンバー」 職員を怒鳴りまくる「トリカブト殺人・主犯」 凶悪死刑囚たちの知られざる「獄中生活」 身の回りの世話をした元受刑者が証言

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時間稼ぎ

 連合赤軍事件は70年代の日本を震撼させたが、90年代の世に衝撃を与えたのはオウム真理教の起こした一連の事件だった。東京拘置所にはオウム事件に関係した死刑囚が13人もいた(当時)。男性の担当したフロアにも収監されていたが、その一人が地下鉄サリン事件の実行役で、元教団幹部の豊田亨(45=当時)である。

「2012年6月、逃亡していたオウム事件の容疑者・高橋克也が逮捕された時、警察が彼の所に来て事情を聞いていました。高橋は豊田がサリンを撒いた時の運転手役だと聞きました。豊田自身は東大理学部卒らしく、親から送ってもらった数学の専門誌の問題を熱心に解いていました。周囲にはほとんど無関心で、いかにも知識人らしい匂いのする死刑囚です」

 同じフロアにはやはりオウム元幹部の岡崎一明(52=当時)もいた。坂本堤弁護士一家殺害事件の実行犯として死刑判決を受けているが、

「大震災の原発事故があってから、放射能をとても気にしていた。特別購入で買った生鮮食料品に放射性物質が含まれているかどうかが心配で、“このリンゴはどこから来たんだ? これは大丈夫か?”と担当官に産地を聞きまくっていました。生への執着が強い人だと思いました。彼は再審請求をしていますが、請求には提出書類が3つ必要。彼はそれをわざと1通ずつ出す。そうすると裁判所から、“書類が足りません。いつまでに提出してください”と通知が来る。それを無視していると、もう少し強い調子で催促する通知が来ます。それでも無視すると、今度は“このまま出さないと請求を取り消します”という強い勧告がくる。そこで、彼はようやく2通目の書類を提出するのです。彼は申請だけで1年以上はかけていたと思います」

 再審請求中は死刑執行が行われないことは暗黙のルール。執行を一日でも遅らせようと、時間稼ぎをしていたというわけだ。

職員が委縮

 同じく再審請求をしているのは、埼玉保険金殺人事件で死刑が確定した八木茂死刑囚(63=当時)である。トリカブトを使い、2人を殺害したとして逮捕された。

「八木は自分が無罪になると信じていて、カレンダーに自分が何日拘置されているかを記録しています。出所した時の賠償金を計算していたのです。しかし、八木という人は怒りっぽい。ちょっとしたことでも担当官や衛生夫を怒鳴ります。拘置所では月に2回ほど、死刑囚が房に何か隠し持っていないかを検査します。“捜検”と呼ばれていて、30代ぐらいの若い職員が4、5名で回るのですが、ある時彼の機嫌が悪く、“お前、足が臭いだろう! 出ていけ”と怒鳴って房に入れなかったことがありました。その場を目撃しましたが、若い職員は萎縮して“あ、すいません”と言ってロクに検査をせず、“八木のところには行きたくない”とぼやいてましたね。彼は配られた新聞を房の中に入れたままで半日も返さなかったりするなど、扱いに大変苦慮する死刑囚でした」

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 記事から12年が過ぎ、記事中の豊田、岡崎は2018年7月に死刑が執行された。坂口、八木は未執行で、今でも拘置所で暮らしている。

【後編】では、執行が行われた日の死刑囚たちの様子や、拘置所内で「問題児」と言われる他の著名死刑囚たちの生活ぶりについて詳述する。

デイリー新潮編集部

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