危うく未収録になりそうだった名曲…80万枚超ヒット「どうぞこのまま」 丸山圭子が貫いた“これは絶対”の想い

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音楽を教えること

 1984年以降は、子育てなどもあり、歌手活動をしばらく休止していた。1993年に次男を産んだ後に離婚してからは、子育てと仕事の両立を考え、音楽を教える仕事もした。

「本当は歌をやりたかったけれど、全国を飛び回るような仕事はできない。定時で帰れるような仕事をしたいと考えていた頃、ギターの鳥山雄司さんらが講師を務める『ヒューマンミュージックカレッジ』という音楽学校に誘われて、シンガーソングライターとボイストレーニングの講師をすることになりました」

 当時の教え子には、映画「THE FIRST SLAM DUNK」の宮城リョータ役や、ウルトラマンレグロスの声優を務めた仲村宗悟がいる。校長からは「丸山さんがこんなに教えることに向いているとは思わなかった」と感心されたという。

「両親が教師だったので、その血なんでしょうかね。誰かが成長していくのを見ているのが好きなんです。もし音楽の道に進まなかったら、教育学部に進学して先生になっていたと思います」

 ヒューマンミュージックカレッジに続き、ロック&ポップスコースが新設された洗足学園音楽大学の客員教授も務めた。近年のライブでは、教え子とともにステージに上がることも多いそうだ。

作るエネルギーが溜まっていく

「私はソングライター気質なんだと思います。メッセージや気持ちをその時代時代に合わせて、自宅で作っていくんです。作るためのエネルギーが自然に貯まるんです。『ラヴ・イズ・オーヴァー』の伊藤薫には、〆切も何もない状況で作れるのはすごいって言われますけどね(笑)」

 以前はライブというと緊張ばかりが先立ったが、ここに来てようやく楽しむ心の余裕が出てきたという。

「歌うことは、生きているって感じがして、とても幸せ。かつてはプレッシャーを感じたり、期待に応えないとと肩肘張っていたけれど、今はすごく自然体です。だから年齢を重ねるのも悪くないな、と。時が経つことで言葉の重みも変わってきていますよね。同じ歌を歌っても、昔より感動していただいたり、より伝わったり」

 聴く人の反応をきちんと感じられるような会場で、その空間・時間を楽しむライブを続ける。ピアノ1本でのライブから、さまざまなアーティストとのジョイントコンサートなども行う。自らの声質を活かしたカバー曲なども含め、精力的に歌い続けている。

「やっぱり『どうぞこのまま』は大切な曲です。あまりにも代表曲になってしまったので、他の曲を聴いてほしいなと思う時期もありましたけれどね(笑)。最近では『黄昏めもりい』に入っていた『夕焼け人形』がラジオで取り上げられたりもしていますし、さまざまなライブでいろんな曲を歌っていきたいですね。そしてこの秋に、古巣のエレックレコードから新しいアルバム『彩色兼美』を発売します。10曲全て書き下ろしです。私たちが『3Generations』と呼んでいる、20代ピアニストの穴水佑輔、40代ベーシストのサトウレイ、そして古希をすぎた私の3人でレコ発ライブをやっていきます。世代の違う3人が生み出す音楽の化学反応をお楽しみ下さい!」

【レコ発ライブ】
10月25日(土) 東京・赤坂ストラドホール
11月8日(土) 大阪・Sope Opera Classics
11月15日(土)京都・Rag
11月16日(日)名古屋・モナペトロ

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 第1回【不朽の名曲の誕生前 丸井でギターを買い、ラジオで歌って“修業”した丸山圭子の原点】では、「どうぞこのまま」に至る前までのバンドや歌手としての活動について触れている。

デイリー新潮編集部

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