もしも自民党が「高市新党」と「石破新党」に分裂したら…専門家が「最も得をするのは有権者」と断じる“納得の理由”

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 第1回【議論が白熱する「自民党分裂」は現実となるか? もはや“机上の空論”ではなく「政界再編につながる重要な政治課題」と識者】からの続き──。政局の“台風の目”になるかもしれない自民党分裂論は、意外なことに選挙制度と密接な関係があるという。戦後の日本では衆院選と参院選の一部で長く中選挙区制が採用されてきた。(全2回の第2回)

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 中選挙区制とは都道府県を複数の選挙区に分け、1つの選挙区で3人から5人の候補者が当選するという選挙制度だ。

 しかし1994年に公職選挙法が改正され、衆院選では小選挙区比例代表並立制が導入された。日本で二大政党制を実現するための改革と説明されたことを覚えている方も多いだろう。担当記者が言う。

「ところが現実は全く違います。二大政党制どころか、今の日本は政党が乱立する“群雄割拠”の状態だと言えるでしょう。何しろ今回の参院選で議席を獲得した政党は11党もありますし、衆院でも10党が議席を有しています。ヨーロッパで二大政党制が機能しているのはイギリスぐらいで、他の国では中小政党が連立政権を組むのが一般的です。日本でも自民党と公明党の連立少数与党に立憲民主党や日本維新の会が加わることが取り沙汰されました。二大政党制よりヨーロッパ型の多党連立政権のほうが日本の政界でも現実味を増していると指摘する専門家や識者もいます」

 自民党は1955年、リベラル色の強い自由党と、保守色の強い日本民主党が合併して誕生した。現在、自民党の分裂が現実味を増しているのは、自民党は結党当時から“呉越同舟”や“同床異夢”の側面があったからだ。

自民党が分裂するメリット

 もし自民党が分裂して消滅し、リベラルな“新・自由党”が誕生した場合、石破茂首相や、小泉進次郎農水相が参加することが取り沙汰されるだろう。

 一方、保守色の強い“新・日本民主党”が誕生すれば、高市早苗氏や小林鷹之氏の入党が期待されるかもしれない。

 ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「あくまでも僕の個人的見解ですが、自民党の分裂が政界再編の起爆剤として機能するのであれば歓迎します」と言う。

「政界再編が起きれば、有権者にとって非常に分かりやすい政治状況に変わる可能性があります。具体的には自民党が分裂して生まれる保守色の強い新党に、日本保守党や場合によっては参政党なども加わり右派の政治グループが誕生。自民党のリベラル派と立憲民主党の右派、公明党や国民民主党、場合によっては日本維新の会などによる穏健保守・中道のグループ、そして立憲民主党の左派を中心とする左派の政治グループ。共産党や、れいわ新選組、社民党もそれぞれのグループに参加し、日本の政界が大きく分けて3つのグループに再編されれば、何よりも有権者が投票しやすくなるはずです」

 鈴木氏は大前提として「僕はヨーロッパ型の多党連立政権より、二大政党制のほうが優れていると考えています」と言う。

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