「まるで宝塚女優」 謝罪会見に勝負服で臨んだ福井県警本部長のホントの評価
警察庁内部の評価
前川さんに直接謝罪するかと問われると、「諸般の情勢を踏まえつつ考えていく」という官僚答弁に終始した。前川さん側からすれば、ちゃんと謝っていないとも受け取れそうだが、警察内部の見方は異なる。
警察庁の中では次のようなプラス評価が支配的だという。
「ああいう会見の場合、本部長はとにかく余計なことを一切言わなくていい。国会での答弁と同じで、どんなに繰り返しの質問が来ようとも、手元のメモに書いてあることだけを言っていれば何とかなるんだから。会見は地元の記者クラブに限定されたものだし、もともとそんなに厳しい質問も出ないだろうが、無難に済ませることが最優先だ。そういう意味では増田本部長もそのあたりをよく分かっていて、うまく乗り切ったと言えるだろうね」
警察に限らず、不祥事が起きた際の謝罪の仕方がその後の出世に影響することが少なくない。記憶に新しい失敗例はことし6月、冤罪が明らかになった「大川原化工機の冤罪事件」をめぐる謝罪。逮捕された社長らへ警視庁の鎌田徹郎副総監がテレビカメラの前で直接謝罪をしたが、被害者の名前を言い間違えるという大失態をおかし、組織内外から大きな批判を浴びた。
7日の警視総監の会見では
7日になって迫田警視総監は異例の会見を開き、キャリア8名を含む19名の処分などを発表した。迫田氏は会見で同社への捜索差し押さえなどが始まった際に自身が警察庁外事課長だったことに言及し、反省の言葉を口にした。
実は増田氏も外事・公安畑ゆえに大川原化工機の冤罪事件とは無縁ではなく、警視庁の外事1課長時代に一部で捜査に関わっていたとされる。この件について「福井に来てからも自らの口ではほとんど何も語らず、責任もとっていない。組織に忠実で上層部にいい顔をしてきただけの人だ」との厳しい指摘もあったが、今回の処分者の中に迫田氏と増田氏は含まれていない。
前川さんの件について今後の関心は「本部長自らが前川さんに対面して謝罪するか」となっている。「本人に問題があったわけではないが立場的に直接謝罪は不可避」なのは衆目の一致するところで、あとはタイミングの問題だけだという。
娘と共に赴任して
晴れて無罪となった前川さんは、警察の捜査について損害賠償を求める訴訟を起こす考えもあるといい、その場合は裁判の状況を見ながら謝罪の時期を探っていくことになる見通しだ。
警察庁内部には、「将来有望で、色々な意味で注目されている増田本部長へのダメージは最小限に抑えたい」との思惑もあるという。増田本部長の任期は1年ほどとみられており、「民事裁判が長引けば、前川さんに謝罪する前の来年の春頃にも交代してさっさと東京に帰るのではないか。それが一番無難かもしれない」との声も聞こえる。
私生活では10歳以上離れた医師の夫との間に1人娘がいる増田氏。30代の頃に在カナダ日本大使館の一等書記官を任命された際に娘だけを連れて現地に赴任し、ベビーシッターを雇いながら仕事をしていたという逸話も残っている。
新しい時代のキャリア女性のロールモデルならではの経験談を福井の地元記者に囲まれながら朗らかに披露する機会は訪れるだろうか。
[2/2ページ]

