「まるで宝塚女優」 謝罪会見に勝負服で臨んだ福井県警本部長のホントの評価

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殺人の冤罪事件

 8月1日に福井県警察本部で行われた記者会見。カメラの前で本部長は緊張した面持ちで深々と頭を下げていた。この春、福井県警で女性初の本部長となった増田美希子氏(48)、一部で“宝塚”本部長とも呼ばれる人物だ。この日の増田氏のファッションに、担当記者は彼女の本気度を見たという。記者ならば知る「勝負服」だったからだ。それだけ警察にとっては重要な謝罪会見だったということになる。

 謝罪の理由は19年前の事件。

 1986年に福井市で中学3年の女子生徒(当時15歳)が殺害された事件をめぐって懲役7年が確定して服役した前川彰司さん(60)が刑期を終えた後に再審請求し、ことし7月に名古屋高裁金沢支部が無罪の判決を言い渡した。検察庁はこのほど上告しないことを決め、事件発生から実に39年が経って前川さんの無罪がようやく確定することになった。その謝罪会見に、勝負服を身にまとった増田氏が臨むまでの水面下のやり取りなどについてお伝えする。

何か重要なことがあるといつも

 増田氏は東大から2000年に警察庁に入ったキャリア官僚で、外事・公安畑を中心に歩んできた。華々しい経歴と宝塚女優のような風貌から、“宝塚”本部長などと呼ばれたこともある。東京から福井県警にやって来た際にはメディアにも大きく取り上げられた。

 警察内部ではいわゆる「オヤジ受け」が非常に良く、歴代の警察庁幹部や現在の警視総監の迫田裕治氏など上層部に非常に目をかけられていることで知られているという。

「将来は女性で初めての警視庁公安部長や警察庁の局長級ポストも視野に入ってきており、同期でも出世の先頭グループにいる」(社会部記者)というから、「女性活躍」が奨励される今の時代に象徴のような人物と言えるであろう。

 さて、冒頭で触れた会見に増田氏は黒のスーツに白ブラウスという、「何か重要なことがあるといつも身につける勝負服」(同)とされる姿で登場。少し緊張しながらも、きりっとした表情でカメラを見つめていた。

警察庁とも複数回やり取り

 無罪判決の中では、警察が捜査に行き詰まって関係者の供述を誘導していたことなどについて強く批判されている。これについての質問に対しては「重く受け止め真摯に反省しています」と原稿通りの答弁をきっちりと述べた上で、さらなる質問には「疑念が抱かれることのないよう適正かつ緻密な捜査に努めて参ります」という、無難なフレーズを何度も繰り返していた。

 会見に臨むにあたっては福井県警内部だけではなく警察庁とも複数回やり取りをして細かい想定問答を作成していたという。そしてそこでは、「当時の捜査で一部不適切なことがあったことは、判決でも指摘されているので認めざるをえないが、あくまで40年近く前のことであることを強調するように」「前川さんに対して会見の場で謝罪することは避ける」などといった方針が内々に共有されたという。

 実際、増田氏は、取り調べや捜査の手法についてすでに改善がなされているとして、当時の捜査についての徹底的な検証については行わないとし、さらに前川さんに対しては「長くご負担をかけることになってしまったことについて、重く受け止めています」と、何とも微妙な表現で述べるにとどまった。

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