「毎週のように“圧迫面談”で退職を迫られる」 ベネッセの「陰湿リストラ」を社員が証言
「会社に行ってもやることがなくなった」
ベネッセが希望退職を募るのは今回で2度目だ。1955年の創業以来初となる300人規模のリストラに踏み切ったのが2014年。この時は主力の通信教育サービス「進研ゼミ」をはじめとして、グループ全体で約4000万人に上る個人情報が流出し、その補償金の捻出などで赤字決算に陥ったことが原因だった。
「私が在籍するのも、進研ゼミに関わる部署です。11年前の個人情報流出騒動で退会が相次ぎ、さらに少子化やデジタル教材を使った競合他社の参入も加わって、進研ゼミの国内会員数は10年前の約260万人から最近は150万人程度にまで減少しています。一方で関連社員数はほぼ変わっておらず、今回の希望退職の狙いも“進研ゼミのスリム化にある”との話を耳にしました」
終わりの見えない面談だけでなく、もう一つ、須山氏を悩ませたのは仕事がなくなったことだった。
「これまで自分が担当していた業務が若手社員に割り振られ、新規プロジェクトからもベテラン勢は外されるなど、会社に行ってもやることがなくなりました。まるで真綿で首を絞めるように退職を迫るやり口にはあきれて不信感が募るばかりです。今では〈一人ひとりの『よく生きる』を実現する〉との企業理念も空々しく響きます」
“人”を必要としないサービスへシフト
経済評論家の鈴木貴博氏が言う。
「ベネッセは昨年にMBO(自社買収)を実施しましたが、すでにこの時点で今回の流れは想定されていました。同社の経営の柱は、進研ゼミを中心とする国内教育事業と介護事業の二つ。しかし売上高の半分近くを占める国内教育事業の営業利益は毎年減少を続けています。創業家と共同で自社株の買い付けを行ったスウェーデンの投資ファンドEQTは、IT技術などを用いた業務の効率化(DX)を得意としており、今後はより人を必要としない、サービスのデジタル化へとシフトしていくでしょう」
ベネッセに事実関係を尋ねると、
「社員一人ひとりと丁寧にコミュニケーションを重ねながら(中略)個別の状況に配慮した対応を心がけております」(広報部)
と回答した。
同社は12年に強引なリストラのやり方を巡って社員から訴訟を起こされ、敗訴後に和解した過去がある。その教訓はどこまで生かされているのか。
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