来春センバツから「DH制導入」で強豪校が優位に? 高校野球に「大谷ルール」がもたらす問題点とは

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「大谷ルール」は果たして…

「功」を伝えるとすれば、今春のセンバツ大会前、こんな光景を目にした。

 3月2日、群馬県・健大高崎高校は同校のグラウンドに、今夏の西東京代表の座を勝ち取った日大三高を招き、練習試合を行った。グラウンド脇にはNPBスカウトのほか、フィリーズ、ロイヤルズなどのMLB関係者もいた。お目当ては150キロ台後半の剛速球を投げ込む健大高崎の石垣元気(3年)だったが、同じ投手の佐藤龍月(3年)も「9番・DH」で出場していた。練習試合だからできた出場方法だ。

「佐藤は昨夏にトミー・ジョン手術を受け、投球練習もできないでいました。昨春のセンバツ大会で同校を優勝に導いたのは、『石垣、佐藤のWエース』でした」(地元メディア関係者)

 佐藤は神奈川県から同校に進学してきた。野球留学の是非はともかく、DH制は大怪我を負った野球留学生にも出場の機会を残すものとなった。今夏、その佐藤は外野手登録されている。しかし、大谷ルールというのが気になる。エース級の投手を2枚以上持っている高校はほかにもある。一例を挙げれば、山梨学院の背番号1は檜垣瑠輝斗(2年)だが、控え投手の菰田陽生(2年)はすでにNPBスカウトが打撃力に二重丸をつけたスラッガーでもある。菰田が「先発投手兼DH」で出場し、途中からエース檜垣に交代する継投策を取られたら、攻撃力を落とさずに逃げ切り態勢に入れる。

「甲子園に出場してくる高校は、二番手の投手も高いレベルを持っています。クリーンアップを任されているエースも多いです」(前出・出場校教員)

 今夏の出場校には高いレベルを持った控え投手も多い。また、私立高校には投打ともにハイレベルな球児が何人もいる。DH制は確実に投手の負担を軽減するが、公立の一般校と私立校の格差がさらに広まってしまう。日本高野連は7回制の是非よりも大谷ルールによる「罪」も話し合っていくべきだろう。

デイリー新潮編集部

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