来春センバツから「DH制導入」で強豪校が優位に? 高校野球に「大谷ルール」がもたらす問題点とは

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7回制導入は?

 18年から導入されたタイブレーク制にしても、当初は延長戦が醸し出すドラマ性がなくなるとし、多くの高校野球ファンが反対した。しかし、今夏の地方予選では千葉県、群馬県の決勝戦では延長・タイブレーク制で代表校が決まり、その「人為的に置かれた走者を帰還させないための攻防」が新たなドラマを繰り広げている。「投手の負担軽減」で導入されるDH制もまた時間の経過とともに“違和感”がなくなっていくのかもしれないが、その発表会見の質疑応答で、意味深なやり取りも交わされていた。

「検討会議後、高野連の井本亘事務局長が説明してくれました。DH制導入まで都道府県の高野連と何度も意見交換をしてきたこと、新たな出場機会の創出、投手の健康対策などを丁寧に説明してくれました。でも、気になったのは事務局長が最後に言った『これがゴールなのか変化が必要なのか、議論していきたい』との言葉です」(前出・同)

「議論継続」の言葉に、各メディアが飛びついた。DH制の採用は7回制導入への布石ではないか……との疑問につながったからだ。その質問を受けた井本事務局長は、

「慎重に進めていかなければならない」

 と、導入の是非がまだ整理されていないと答えた。DH制導入において国際試合や大学など、他の野球組織でも採用されている経緯も説明している。「他組織、他大会でも」の理由づけでいけば、7回制は今秋の国民スポーツ大会ですでに導入が決まっており、一部国際大会でも採用されてきた。改めてその確認の質問がされたのだが、

「今回のDH導入は7イニング制にリンクはしておりません」

 と、井本事務局長は強く否定していた。

「7回制の導入については、現場指導者からも反対の声が多いと聞いています。高野連は投手の健康問題や暑さ対策に熱心に取り組んでおり、現在の午前、夕方の二部制だけでは防げないと分かれば、試合時間を短縮する方法として7回制も真剣に議論しなければならないでしょう」(前出・出場校教員)

 DH制であれば、打席に立ち、走者として走らなくなる分、投手の負担は確実に軽減されるだろう。しかし、日本高野連が採用しようとしているのはメジャーリーグで定着した「大谷ルール」である。DH制がもたらす投手の負担軽減とは、長いペナントレースを乗り切るためであって、トーナメント制の高校野球大会にも適しているのかどうかはまだ分からないのだ。

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