「不妊治療から逃げたいんでしょ」妻に見透かされて鬱 48歳夫は“悪酔いの夜”で一線を超えた

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【前後編の前編/後編を読む】「あなたの奥さんに会ってみたい」年下の不倫女子は闘る気マンマン… 3年沼った48歳夫に残ったもの

「沼る」というのは、何かに深くはまって抜け出せなくなるような状態のことを言う。単に「好きになる」「熱中する」というより、没入感があり、依存度も高い。「不倫に沼る」はまさに危険な状態である。

「そういう意味では僕も沼ったんですけど、依存というより彼女の挑発に乗せられたという感じがしますね。あ、でも結局、それではまっていったわけだから、それもまた依存なのかもしれませんが……」

 藤乗雄一郎さん(48歳・仮名=以下同)は、そう言って少し恥ずかしそうに肩をすくめた。彼が体験した3年近くにわたる「沼った不倫」は、かなり壮絶なものだったようだ。

「逃げたいんでしょ」

「自営業だから社会的にはなんとか隠し通せたんですが、妻にはバレました。彼女は妻と対決したいとずっと言っていた。それだけは阻止しましたが……」

 なにやらまだ夢から覚めていないような発言が気にはなるが、雄一郎さんと不倫相手との馴れそめは、今から3年前のこと。もちろん、彼はそれ以前に結婚していた。

「大学を出てサラリーマンになったけど、なんだか毎日がただ過ぎていくだけで、楽しくない人生だったんですよ。29歳のときに友だちの紹介で出会った同い年の女性と結婚して。ここまではごく普通の人生でしたが、子どもができなかったのが想定外でした。結婚すれば子どもは自然とできるような感覚でいたから、できないことでちょっと焦りましたね。職場ではパワハラ系の上司に、『子どももできないのか、男として一人前とは言えないな』とまで言われて……。それがきっかけで、会社を辞めて独立することを考え始めました」

 妻に相談すると、「不妊治療から逃げたいんでしょ」と言われた。半分、図星だったが、それとこれとは別だとムキになって言い返した。ただ、彼自身は夫婦ふたりだけの生活でもいいと思っていたし、治療までして授からなくてもいいという思いもあった。子は天からの授かりものだから、と。

ふんわりと浮気

「そのころ、僕はふんわりと浮気をしました」

 ふんわりと? 妙な表現をするなと思っていると、彼はクスッと笑って「変ですよね。なんというのかなりゆきで知り合いと関係をもってしまったということです」と自らフォローした。

「職場も家庭も息がつまる。逃げ場がなくて鬱々としているときに学生時代の元カノにたまたま会ってホテルに行ってしまったんです。ただ、彼女も結婚していたし、会ったのは偶然のなせるわざ。今後は今まで通り友だちでいようとお互いに決めた。そんなうっすらとした関係でも僕は救われた」

妻の顔を見たら…

 30代半ばで、彼は職場の先輩とともに小さな事務所を立ち上げた。それまで手がけていた仕事と関連もあり、ある程度、先の見通しも立てることができた。「業種は勘弁してほしいんですが」と言いつつ、小さな会社だが、数年でそこそこ軌道に乗ったと話してくれた。

 独立に大反対していた妻だが、それまでと変わりない生活費を入れることで文句を言わなくなった。むしろ、ときどき「忙しい? 無理しないでね」と優しい言葉をかけてくれることもあり、「ようやく家庭も仕事も落ち着いた」と感じた。だが、妻は本当は不妊治療のことでもっと協力してほしかっただろう。雄一郎さんはそれを感じながらも、やはり逃げ腰だった。

「あるときちょっと仕事で嫌なことがあって、仲間と飲んだんですが、そういうときはあまり楽しくないですよね。それぞれ悪い酔い方をしてしまったので、早く帰って明日から出直そうと励ましあった。帰宅して妻の顔を見たら、『不妊治療のこともストレスのひとつだ』と急に気持ちが攻撃的になり、妻を襲ってしまいました。翌朝、ごめんと謝ったけど、妻にはしばらく口を利いてもらえなかった」

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