時価総額4兆ドル「エヌビディア」の躍進はいつまで続くのか 未来を左右する「データセンター」「トランプ」「中国」

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 ここ数年、ことあるごとに「バブル」だと指摘されながら、気づいてみたら世界ではじめて時価総額4兆ドルの大台を突破したエヌビディア。躍進はいつまで続くのか。それを見極めるには、経済的な視点のみならず、技術的な視点も交えて同社の本質を掘り下げる必要がある。人工知能と建築設備工学の学際的研究で博士号を取得し、投資家、実業家としての顔も持つ池田伸太郎・東京大学生産技術研究所特任准教授が、同社の「今」と「これから」を分析する。

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 周知の通り、データセンター向けの半導体が大きな成長ドライバーとなっていて、マイクロソフトやメタなどをはじめとした巨大テック企業の旺盛な設備投資に業績が連動しているのが、今のエヌビディアといえます。

 同社が提供するGPU(画像処理半導体)の処理性能は頭一つ抜けていて、生成AIに用いられるデータセンター向けGPUシェアの大半を占めています。並列計算を効率的に行うためのプラットフォーム「CUDA」や、複数のGPUを高速につなぐためのインターコネクト「NVLink」などの独自技術により強固なビジネスエコシステムを構築しており、他社にはなかなか代替しえない領域に到達しています。

 ではこの躍進はいつまで続くと見るべきなのか。

 結論から申し上げると、少なくとも目先数年間は同社の競争優位性が簡単に揺らぐようなファクターは見当たらないといっていいでしょう。

 とはいえ、物事には必ずポジティブな側面とネガティブな側面がありますので、エヌビディアの先行きにおいて不確実な要素が存在することもまた事実です。ここではあえていくつかのリスク要因を列挙し、その論点を整理します。

データセンター向けの設備投資がいつまで続くか

 まず業績における考慮すべきリスクとして何より大きいのは、エヌビディアの主要顧客である、マイクロソフトやメタなどのメガテック企業が、データセンター向けの活発な投資をいつまで維持するかという点です。

 たしかに、エヌビディアのゲーミング向け半導体や自動車・ロボティクス向け半導体なども堅調に成長を続けてはいますが、売上全体における割合は小さく、8割程度はデータセンター向けの半導体が占めています。特に自動運転分野は政治的なファクターに左右される面も大きいですから、データセンターに替わる成長領域かといわれると、まだそこまでとはいえません。

 そもそも、つい3年ほど前までは、同社の売上の主軸はゲーミング向けでした。それがゲーミング向けの需要が減り、また米国の急激な利上げ局面とも重なったことで、業績が急悪化し、株価も急降下。その直後に発表されたChatGPT等によるデータセンター需要を実質的に“総取り”したことで、構造転換ができた経緯があります。ですから現在のデータセンター需要とエヌビディアの業績は、文字通り連動しているわけです。

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