「国宝」「べらぼう」が絶好調…二枚目も三枚目もOK 横浜流星は「令和の田宮二郎」になれるか
吉沢と猛稽古
横浜流星(28)が名優への階段を上り始めた。吉沢亮(31)と共に歌舞伎の女形に扮している映画「国宝」は大ヒットとなり、主人公の蔦屋重三郎を演じているNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」も評判高い。強みは役の幅の広さ。端正なマスクながら汚れ役や悪党役も得意とする。昭和の名優・田宮二郎さんを髣髴させる。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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【貴重写真】「透明感やばすぎ!」…高校時代の横浜流星。「ニコラ」モデルを務めた頃
吉沢と横浜は「国宝」で女形の人気演目「二人藤娘」「二人道成寺」などを踊る。その美しさは観る側を圧倒する。吹き替えは一切使っていない。
吉沢が演じるのはヤクザの家に生まれた立花喜久雄。抗争で父を失ったことから、渡辺謙(65)が演じる上方歌舞伎の大物・花井半二郎に引き取られる。顔立ちの美しさと踊りの才能が買われた。
ライバルとなるのが、横浜が演じる花井家の御曹司・俊介。一定の素質はあるが、どうしても喜久雄には勝てない。花井半二郎の名跡を継ぐのは才能の喜久雄か血筋の俊介か。2人の友情、それぞれの人生譚も手厚く描かれている。
興行収入は75億円を超えた。100億円も見えてきた。アニメ作品を除くと、今年のナンバーワンはほぼ確実。質への評価も高い。演技、演出、脚本、撮影。いずれも図抜けている。今年度内の映画賞を独占しそうな勢いだ。
吉沢と横浜は撮影開始の1年半前から、4代目中村鴈治郎(66)たちの指導を受けた。踊りのみならず発声や所作も。平均的な映画の10倍近い稽古期間だが、それでも時間が足りないと思ったはずだ。
男性が骨格の違う女性に扮する女形役を演じるのは至難。吉沢は剣道2段で、横浜も中3のときに極真空手の国際大会で優勝しており、ともに身体能力が高いが、3、4歳から稽古を積む歌舞伎俳優とは前提が違う。
だから2人はプライベートな時間も女形の稽古に充てた。吉沢は役づくりを周到に行うことで知られる。
たとえば主演した大河ドラマ「青天を衝け」(2021年)で徳のある渋沢栄一を演じる直前、主演映画「青くて痛くて脆い」(2020年)で元サークル仲間への復讐心を燃やす酷く歪んだ大学生に扮した。まるでサイコパスのような若者だった。脚本を読んで即座に出来るような役ではない。
「国宝」の李相日監督(51)は「流浪の月」(2022年)で横浜と組んでいる。横浜が役づくりに打ち込むことを知っていたから、難役も安心して任せられたのだろう。
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