「国宝」「べらぼう」が絶好調…二枚目も三枚目もOK 横浜流星は「令和の田宮二郎」になれるか

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

民放ドラマと違い、悪役も

「流浪の月」での横浜は、過去に幼女好きの男と同居生活を送っていた広瀬すず(27)の恋人役。当初は美形の平凡な青年だったものの、広瀬が男との交流を復活させると、嫉妬や屈辱からDVを行い始める。

 やがて横浜は自己崩壊。目には力がなくなり、頬はげっそりとこける。そして広瀬と別れの言葉を交わしたあと、刃物で自死を図る。

 横浜の顔つきが変わったのはメークではない。横浜は撮影が始まると作品のことしか考えず、設定によっては食事を摂らない。この演技で日本アカデミー賞の優秀助演男優賞を獲った。

 主演映画「愛唄-約束のナクヒト-」(2019年)もそう。平凡な若者が、がんで余命3カ月と宣告される物語で、少しずつ痩せていくのだが、横浜は自然と食事が喉を通らなくなったという。目のクマもありのままだった。

 ひところ役の幅が広い俳優をカメレオン俳優と呼ぶことが流行した。しかし、これに芸能プロダクションが不快感を示したことがある。役は苦労の末に習得するものだからである。体内構造によって自然と色が変わる動物と一緒にされては、たまらないのだ。

 フェザー級(57.15キロ以下)で世界レベルのプロボクサー役だった横浜の主演映画「春に散る」(2023年)の撮影前には、プロボクシングのC級ライセンスを獲った。さらに週2回、ジムに練習に通い続けた。試合のシーンもあったので、本物の動きに近づくためである。猛稽古は「国宝」だけではない。

 10キロの体重増も行った。試合シーンなどに迫力を生むためだろう。公称176センチで体重は60キロ以下と見られていたから、これは苦労がなかったように思われた。だが、試合のシーンで目を見張る。横浜の腹筋は何段にも割れていた。相当トレーニングを積んだのだろう。

 この映画は元世界的ボクサー役の佐藤浩市(64)とダブル主演で、横浜がコーチを懇願するところから始まる。佐藤は当初断るが、それは横浜がチンピラにしか見えなかったから。目つきが悪く、無精ヒゲを生やし、口調も荒かった。それが徐々に精悍なボクサーに変貌する。

 横浜が民放ドラマに出演する場合、浜辺美枝(24)と共演した日本テレビ「私たちはどうかしている」(2020年)や川口春奈(30)の相手役を務めたTBS「着飾る恋には理由があって」(2021年)など大抵がヒロインの相手役。

 横浜が透き通った肌と涼しいまなざしの持ち主だから、そうなるだろう。そもそも民放ドラマからはピカレスク作品やサスペンス作品がほぼ消えている。相変わらず民放はラブストーリー風味のあるドラマが多い。だが、映画での横浜は違うのである。

 主演映画「ヴィレッジ」(2023年)では当初、世捨て人のような青年だった。亡き父親は殺人犯。母親役の西田尚美(55)はパチンコがやめられず、横浜がゴミ最終処分場で稼いだ金を使ってしまうからだ。生きる望みがなかったのである。

 だが、やがて悪事に手を染め始めると、生き生きとするようになる。狂気を抱き始める。横浜はこの映画などで報知映画賞の主演男優賞を獲った。

 やはり主演映画の「正体」(2024年)では少年時代に赤ん坊を含む一家3人を惨殺した死刑囚役。とんでもない話である。しかし冤罪で、護送中に脱走する。

 偽名を使って職を転々とし、逃走を続ける。髪が汚らしく伸び放題になるシーンもあった。最終目的地は一家3人の遺族女性のいるグループホーム。彼女は犯行を目撃しているが、若年性アルツハイマー病だった。冤罪は晴れるのか。この映画で毎日映画コンクール 主演俳優賞などを受賞した。

次ページ:美形は2枚目役ではつまらない

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。