「国宝」「べらぼう」が絶好調…二枚目も三枚目もOK 横浜流星は「令和の田宮二郎」になれるか

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美形は2枚目役ではつまらない

 近年、美形の俳優はドラマも映画も2枚目役ばかりやる傾向が強い。かつては違った。象徴的なのは田宮二郎さんだ。映画「悪名シリーズ」(1961年~)では勝新太郎さんの弟分のチンピラ・モートルの貞を演じた。勝さんとの掛け合いは漫才さながらだった。

 一方でフジテレビ「白い巨塔」(1978年)では野心に燃える外科医・財前五郎を演じた。過去にチンピラ役を得意とした人には見えなかった。

 田宮さんは財前の役づくりのため、医学書を読みあさった。医師らしくなるため、家族との会話や口調をビジネスライクにした。財前は、最後は胃がんでなくなることから、撮影途中から食事を制限。げっそりとやつれた。

 横浜が「べらぼう」で蔦重こと蔦屋重三郎を演じることになった際、一部の大河ファンから「若すぎる」との声が上がった。そんな声はもう聞かない。時の権力者、田沼意次(渡辺謙)と接する際も当初は気後れが見て取れたが、今は堂々としている。

 おそらくは全て横浜の計算だ。養父・駿河屋市右衛門(高橋克実)の世話になっているころは、あえて遠慮がちの演技をしていたのだろう。頬も1月の放送開始時より、ふっくらし、貫禄めいたものも出てきた。なにしろ体重の増減は得意なのである。

 渡辺ら名優に格負けしていないように見えるのは、映画で幅広い役を経験したからに違いない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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