パワハラ・セクハラで“追放”された名物キャスターはYouTubeへ 「フジの天皇」に“完全復権”の見方も
日枝氏の責任
金光氏より遥かに強い権力を持っていた日枝氏の復活を阻むのは至難だろう。もっとも、日枝氏には本当に責任がなかったのだろうか?
人権侵害問題の核心は中居正広氏(52)による元女性アナウンサーへの性的トラブル問題である。2023年6月に起きた。その責任の大半は対処に当たった港浩一前社長(73)と大多亮元専務=2024年6月から2025年4月まで関西テレビ社長=(66)にあるとされたが、この2人を指名したのは日枝氏である。
港氏と大多氏についてフジは6月に損害賠償請求を起こすと表明した。検証番組では2人が中居氏の件でどう動いたかが再確認されたが、それにとどまらず、大多氏が「女性アナは上質なキャバ嬢だ」と発言したことなど2人の女性蔑視性が報じられた。むしろ、そのほうが印象深かった。
これには多くのフジ関係者が疑問を持つ。
「2人に重大な責任があるのは間違いないが、2人だけが悪いわけではない。社の体質に問題があった。それをつくったのは日枝氏。損害賠償請求も検証番組も2人に責任を押し付けるためにあるかのように見えた」(フジ関係者C)
港氏は2015年にFMH内の制作会社・共同テレビの社長に就任し、それでテレビマン人生を終えるというのが局内のもっぱらの見方だった。しかし2022年、日枝氏が抜擢する形でフジの社長に就任する。低視聴率からの脱却が理由だ。
港氏の社長就任の際、日枝氏は「1年で(低視聴率を)なんとかしろ」と厳命したとされる。そんな短期間では局を問わず無理である。事実、視聴率は上向かなかった。
それでも港氏は視聴率上昇を最優先に考えるしかなく、だから「だれかtoなかい」など中居氏の番組を性的トラブル後も切れなかったのではないか。中居氏問題と視聴率の関係を港氏は検証番組で否定したものの、それを疑うフジ関係者は多い。
一方、大多氏は「女性アナは上質なキャバ嬢」と言い放ったが、「女性アナをプライベートな飲み会に同行させる悪習をつくった経営陣はほかにいる。大多氏の先輩だ。視聴率も落とした」(フジ関係者D)
その経営陣は今に至るまで責任を一切問われず、検証番組にも登場していない。フジ社内から「悪いのは港氏、大多氏だけではない」という声が上がるのも無理はない。
検証番組による日枝氏の取材はどうして実現しなかったのだろう。日枝氏側が拒もうが、取材は可能だったはず。
「社内には日枝氏と電話で連絡を取り合っている人間がいる。居場所も分かっている。それなのに直撃などの取材をせず、電話もかけなかったのは、気を使ったということ。ほかの企業の問題だったら、張り込みをしてでもキーパーソンの取材を行うのだから」(フジ関係者C)
日枝氏の復権にあたっての障害は見当たらない。総務省も民間企業である各局の人事には口が出しにくい。また日枝氏には政財界に太いパイプがあるから、外圧に負けることはない。
一方でフジに見切りを付けた人もいる。20年近く前に起こした後輩女性に対する2件のハラスメントが、人権侵害問題の中であらためて問題視され、「BSフジLIVE プライムニュース」(月~金曜午後8時)のキャスターを降板した反町理氏(61)である。反町氏は取締役も解任された。
フジ社内にはこんな声もある。「責任があるのは言うまでもないが、日枝氏らの処遇とは雲泥の差。反町氏はガス抜きに使われたのではないか」(フジ関係者B)。だが、本人は日枝氏たちと違ってフジに未練はないようだ。
8月1日からYouTubeチャンネル「反町理のそこが聞きたい」を開設する。専門が政治であることから、国民民主党の玉木雄一郎代表(56)らの話を聞く。こちらも違う形での復権を目指す。











