「お金があり余っているんだな」…「都民のグランマ」と呼ばれる小池百合子知事が水道料金無償化実現で地方から買う反感の声
7月20日投開票の参院選は、与党の過半数割れで幕を閉じた。自民、公明両党は2万円の現金給付を公約としたが、物価高騰に名を借りた「バラマキ」との批判が噴出し、結果は歴史的な大敗。対照的に、6月の都議選で「知事与党」を勝利に導いたあの人は、鈍重な政府・与党をしり目に、存在感を発揮している。【阿部雄平/ジャーナリスト】
小池百合子東京都知事が今夏、猛暑対策にかこつけて打ち出したのは、水道の基本料金無償化だった。主に家庭で使われている小口径の契約者約800万件が対象で、4カ月で計 3,440~5,840円を無料にする。給水契約があれば自動的に対象となるため、申込みは不要。武蔵野市や昭島市、島嶼部など、東京都が給水していない区域もあるが、これらの市町村に対しても基本料金の収入相当額を交付することとしており、東京都全体で適用している。
石破茂首相は4月22日、電気・ガス料金補助の再開やガソリン代の定額補助の開始を表明していたが、それに被せるかのように小池知事は5月20日、新たな一手を発表したのだ。
無償化するのはあくまでも「基本料金」のみであり、水道料金全体が無料になるわけではない。それでも家計の助けになるから、都民の評判は上々だ。
要は、「エアコンなどの利用を控えることなく、熱中症対策を徹底して」ということ。物価高騰の影響が続く中、今夏の臨時的な措置として、猛暑から都民の命と健康、暮らしを守るという建て前だ。
都関係者は、
「小池知事の頭の中には当初から、エアコンを気兼ねなく使ってもらう、という考えがあったようです。でも、東京都としては電気料金を抑えるためにできることは限られているし、やったとしても政府の二番煎じになる。そこで、自分のところでできることとして、水道に目を付けたわけです」
と解説する。
「小池さんが『基本料金』というニッチなところに目を付けるわけがないので、周辺の知恵者が『これならできますよ』と入れ知恵したんでしょう」
「公共料金に触るのは筋が悪い」
ところで、この水道料金の負担軽減、庁内では当初、懸念もあった。水道局は東京都の一部局といっても、独立採算の公営企業であり、都民から水道料金を徴収して経費を賄っているからだ。
「公共料金に触るのは筋が悪い」とは都幹部。今回の臨時的な特別措置は、水道料金を充てるのではなく、別途、知事部局の予算で補填して実施するのはそのためで、水道局は敢えて、「水道管路の維持管理計画や水道局の財政収支への影響はありません」とアナウンスしている。
地方からも顰蹙を買った。
「『本当にお金があり余っているんだな』ということに尽きる」。神戸市の久元喜造市長は5月21日の記者会見で、東京都の取り組みについて聞かれ、「都の判断なので何か申し上げる立場ではない」と前置きしつつ、こうぼやいた。「東京都がやったからといって、これを参考にして水道料金の引き下げということは、今の時点では考えていないし、考えられない」
東京都が水道料金の無償化を発表した前日には、小池知事を支える自民党、公明党、それに都民ファーストの会がこぞって、これを要望した。折しも6月の都議選を控えるタイミングで、3党は選挙期間中、これを「実現した」とアピール。小池知事が実質的に、3党の選挙活動をサポートする格好になった。
[1/2ページ]



