「パンは与えられないからサーカスを続ける」“トランプ政治”から見えてくる“参政党劇場”の第二幕
「ディープ・ステート」「日本人ファースト」などのキーワードで注目を集めた参政党。これらの言葉から想起されるのはやはり米トランプ大統領だろう。トランプ大統領も陰謀論で政治批判をかわし支持者を集めているが、他方で足下の経済は不安定さを増し、現実的な政策実績は乏しい。トランプ大統領の熱狂に揺らぐアメリカ政治から見えてくる参政党の今後について専門家に聞いた。
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新興政党ということもあり、参政党の支持者は若年層ばかりだと思いがちだが決してそうではない。JNNの出口調査結果によると、比例投票先として10代と20代では国民民主党に次いで参政党が2位なのに対して、30代と40代では参政党が1位になっているという。
「参政党の支持者には、若い年代だけでなく中高年も含めて、“今まで選挙に行ったことがないけど参政党には入れる”という傾向があります」
こう指摘するのは、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授の三牧聖子氏だ。
「国際的にも極右政党が台頭しているのですが、その背景には中間層の没落があります。格差社会になっていき、“かつてはもっといい暮らしをしていた”とか“本来の自分はもっと良い地位にいるはずなのに下流に近づいている”と思っている人たちが、支持している。年代によらず支持を集めましたが、とりわけ氷河期世代の男性の支持を集めていることは象徴的です」
日本においても、世帯所得の分布が下方へシフトしていることから中間層の没落が指摘されている。1991年には世帯所得の中央値が521万円だったのに対し、2023年には405万円にまで低下しているのだ。
同じ状況にあるのがアメリカだ。米ピュー・リサーチ・センターによると、2023年におけるアメリカの中間層人口割合は51%と半世紀前の1971年から10ポイント以上減少しているという。
トランプより排他的な“日本人ファースト”
中間層の没落に悩むアメリカと日本に現れたトランプ大統領と参政党。両者には多くの共通点が見られると三牧氏は指摘する。
「トランプ大統領が掲げたアメリカファーストと参政党が主張している日本人ファーストは明らかに類似しています。トランプ大統領は、広がる経済格差やラストベルト（錆びた工業地帯）などの問題の根本原因は、ビザを持たない非正規の移民の流入にあるとしました。この20年間、政治に顧みられず、社会で取りこぼされてきたと感じている層に対して富裕層が移民をたくさん受け入れたことによって、本来得られるはずだったものを奪われているのだ、と訴えかけたのです。同様に、参政党の場合は広がる格差や社会問題の根本原因を、グローバリゼーションと外国人流入の増加にあるとしています。参政党が、外国人が公的医療を3割も不正に利用している、といった数値的な根拠に乏しい主張を掲げ、人々の危機感や排外主義を煽っていることも、トランプ大統領と同じ手法です」
参政党の掲げる「日本人ファースト」には、より血統主義的な主張も含んでいるため、その点ではアメリカよりも排他的で閉鎖的だとする。人々を排外主義的な思想にしてしまうと再び移民が必要になった際に、国民にとって心理的障壁になってしまう可能性があると三牧氏は警鐘を鳴らす。
「野党であるということで今は無責任な主張をしていても、さらに勢力を拡大し、政治 を担う立場が見えてきた場合、本当に日本は移民・外国人なしでやっていけるかという現実的な問いに答えなければならなくなると思います」
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