なぜ「立憲民主党」は参院選で敗北したのか…「失われた30年を招いた自公の“共犯者”」「スローガンもネット戦略もインパクトに乏しい」と専門家

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 参院選で自民党は歴史的な敗北を喫し、党内では「石破おろし」が吹き荒れている。だが有権者が「NO」を突きつけたのは与党の自民党と公明党だけでない。野党第一党である立憲民主党も極めて厳しい状況に直面している。特に注目されたのが比例選の得票数だ。1位は自民で1281万票、2位は国民民主党の762万票。それに続く3位は参政党で743万票、そして立民は740万票で4位に沈んだのである。

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 立民が獲得したのは改選前と同じ22議席。共産党のように改選前7議席が3議席に激減と惨敗したわけではないが、国民や参政の躍進に比べて凋落の印象は否めない。読売新聞オンラインの記事によると、立民の幹部は同紙の取材に「事実上の敗北」と総括したという(註)。

 泉健太・前代表は21日、自身のXで立民の議席が増えなかったことを《痛恨の極み》と投稿。敗因を《躍進した他の党と比べ、現役世代の支持で明らかに後塵を拝しました》と分析した。野田佳彦代表も22日、「比例選の伸び悩みは厳しく総括しなければならない」と危機感をあらわにしている。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏は「今回の参院選で、かなりの有権者が“既存政党への拒否”を示しました」と言う。

「自民、公明だけでなく、立民や共産といった既存政党が、軒並み議席を減らしたわけです。一方で、国民と参政という新興政党は躍進しました。この明暗の背景にあるのは“失われた30年”でしょう。この30年間、国民の生活は悪くなることがあっても、良くなることはありませんでした。景気浮揚で無策だった与党に責任があるのは当然ですが、野党第一党の立民も思い切った政策は提示できなかった。つまり“失われた30年”の問題に関して立民は自公の“共犯者”だ、と有権者は判断したのでしょう。野党としてのチェック機能を果たしてこなかったツケが回ってきたとも言えます」

キャッチフレーズの欠陥

 立民は参院選を「物価高から、あなたを守り抜く」というスローガンで戦った。だが、多くの有権者に響くメッセージではなかった。

「政治は結果が全てです。立民の選挙戦略にミスがあったからこそ、参院選で敗北したのです。何が問題だったかと言えば、その象徴はスローガンでしょう。国民の『手取りを増やす夏』と参政党の『日本人ファースト』は実のところ、かなり抽象度の高いメッセージです。国民の場合は、どうすれば手取りが増えるのか説明していませんし、参政も日本人の何を優先させるのか何も言っていません。ところが有権者は非常に分かりやすく、インパクトがあり、魅力的なキャッチフレーズだと受け止めたのです」

 なぜ、本来なら説明不足のスローガンを有権者は歓迎したのか。そして立民の「物価高から、あなたを守り抜く」というスローガンは、なぜ関心を持たれなかったのだろうか。

「普通の有権者は忙しいのです。各政党の公約をじっくりと比較し、その実現可能性を考える、といった時間はありません。『手取りが増える』、『日本人優先の政治を行う』というメッセージにインパクトを感じれば、それだけで充分なのです。国民と参政の2党のスローガンに比べると、立民の『物価高から守る』というスローガンにインパクトが乏しいことは一目瞭然でしょう」(同・伊藤氏)

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