下着泥棒やストーカーは“対象外”…性犯罪歴をチェックする「日本版DBS」で身の毛もよだつ「変態教師」は一掃できるか

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 勤務していた小学校で児童の給食に自身の体液を混ぜるなどし、不同意わいせつや器物損壊などの罪に問われた名古屋市立の元小学校教員・水藤翔太被告(34)の初公判が7月17日に行われた。彼はのちに児童の盗撮画像をSNSで共有していたとして逮捕された小瀬村史也容疑者(37)と森山勇二容疑者(42)と同じ“変態教師グループ”の一員だった。そんな折、“日本版DBS”こと「こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)」が来年12月よりようやく施行される。

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 DBS(Disclosure and Barring Service)とはイギリスの公的機関・前歴開示及び前歴者就業制限機構のことで、こどもや脆弱な大人と接する仕事に就くことができない者のリストを作成し、雇用者に対して求職者の前歴照会を行っている。その日本版といわれるこども性暴力防止法は、幼稚園や学校などの事業者が職員の性犯罪歴を確認することを義務化するというもので、昨年6月に成立した。

 教師によるこどもへの性犯罪が次々と明るみに出る中、今まで法整備されていなかったのが不思議なくらいだ。この法律によって児童に対する性犯罪はなくなるのか、神奈川県警の元刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏に現場の目線で解説してもらった。

「確かに今までなかったのが不思議なほどですが、“聖職者”とも形容される教師が犯罪などしないという認識がこれまでの日本には根底としてありました。しかし、スマホの弊害なのかわかりませんが、一般にも女性のスカートの中を盗撮する行為が横行するようになると、教師の中にもその地位を利用して学校内で児童の着替えを盗撮する者が出始めました。更衣室がない小学校で隠しカメラを仕掛けることなど簡単ですからね。加えて、それを教師同士がグループラインで共有する事態にまでなりました。これはもはや“組織犯罪”であって、こうなっては法で防ぐしかありません。こども性暴力防止法ができたタイミングもいいし、教師による性犯罪を防ぐことにもつながると思います」(小川氏)

 ただし、十分ではないという。

下着泥棒、ストーカーは対象外

「学校側が教師の犯罪歴を照会することが可能になるわけですが、これは性犯罪に限られます。傷害とか暴行は対象外なので引っかかりません」(小川氏)

 性犯罪歴だけが確認できればいいのではないのだろうか。

「警察の取り調べでは、容疑者が性的な暴行を目的としていても、被害者が小さなこどもだとちゃんと証言を得られないこともあります。そうした場合、メディアでいうところの婦女暴行ではなく、罪名はこどもに対する単純暴行で処理せざるを得なくなり、照会の対象とはならないわけです」(小川氏)

 他にもある。

「窃盗も性犯罪ではありませんから照会の対象とはなりません。ですから、下着泥棒も対象外ということになります。学校の先生でいえば、児童の体操着や下着を盗んだ例もありました。性的犯罪というのは下着泥棒に始まり、盗撮に移り、ストーカー、実際に肌に触れる行為となっていく例が多い。エスカレートしていく犯罪ですから、下着泥棒やストーカー行為が照会対象に含まれないのは手ぬるいと言わざるを得ません」(小川氏)

 しかも、性犯罪歴もすべてが照会できるわけではないという。

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