参院選「選挙特番」で日テレ「zero選挙」がテレ朝「選挙ステーション」を破った理由…「名物ジャーナリストの不在」を惜しむテレビ関係者も
7月20日の午後8時に参院選の投票が締め切られる直前から、NHKと民放キー局は選挙特番の放送を開始した。ビデオリサーチの調査によると関東地区・世帯(以下同)で、民放の平均視聴率トップは日本テレビ「NNN参院選 zero選挙2025 第1部」で7・4%だった。民放2位はテレビ朝日「選挙ステーション2025」で7・0%、3位はTBS「選挙の日2025」で6・8%だった。
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ちなみにNHKの「参院選開票速報2025」は17・4%。民放各局の特番を視聴率で上回って全体の1位だった。民放プロデューサーは「日テレは午後7時58分から11時55分まで約4時間、特番を放送して平均視聴率7・4%を記録しました。立派な数字ではないでしょうか」と言う。
「特番は2部構成で、深夜2時までの放送は民放最長でした。端的に言って日テレさんの気合いが伝わってくる構成だったと思います。何よりも視聴者が特番を支持したのは藤井貴彦アナウンサーと櫻井翔さんが出ずっぱりだったからでしょう。安易に尺が稼げるVTRを控え目にし、生の開票速報を主体にするというシンプルな切り口も成功しました。コメンテーターを務めたネットニュース編集長・石田健さんも熱くなりすぎず、偏らない的確なコメントが好感を持たれました。つまり藤井、櫻井、石田の3氏が持つ好感度で長丁場を乗り切り、それが民放視聴率トップの結果につながったと言えます」
プロデューサーの印象に残ったのは、藤井アナウンサーが参政党の神谷宗幣代表にインタビューした場面だったという。
「藤井アナは神谷さんに『最後に一つだけお伺いしたい』と切り出し、『日本の安全について、核武装が安上がりだとする候補者がいらっしゃいました』、『戦後80年、おじいちゃんおばあちゃんが大切に育ててきた平和について、安上がりという表現は使ってほしくなかったんですよ』と疑問を投げかけました。これは東京選挙区で当選したさやさんの発言を踏まえた質問だったわけですが、神谷さんに真っ向から論争を挑むのではなく、やんわりとたしなめたのがよかったと思います。藤井アナの人柄が視聴者にも伝わり、SNSでは絶賛の声が相次ぎました」
TBSの意外な展開
テレビ業界では「民放1位はテレ朝の『選挙ステーション』だろう」との下馬評だったという。その大越健介キャスターは藤井アナとは対照的に、神谷氏へ論争を挑んだ。
「大越さんは神谷さんの『高齢の女性は子供を産めない』発言を取り上げ、なぜ世論が反発したのか質問しました。これに神谷さんは『訂正も謝罪もしない』と断言し、『当たり前のことを問題提起したつもり』と自説を曲げません。大越さんは『男尊女卑的な固定観念や、人を傷つけるネガティブな発言が参政党の主張には含まれる』と苦言を呈し、『リスクも配慮して発言することも大事』と諫言。しかし神谷さんは取り合わず、インタビューは噛み合わないまま終わってしまったのです。日テレの藤井アナは、神谷さんに対する発言が視聴者に好感を持たれましたが、大越さんは『オールドメディアっぽい』と批判されました」(同・プロデューサー)
参院選で躍進を果たした参政党に対し、どんなスタンスで報じたのか──これが各局の視聴率に大きな影響を与えた可能性があるとプロデューサーは言う。
「TBSさんは選挙期間中の7月12日、『報道特集』で参政党を批判しました。参政党は番組内容や、山本恵里伽アナウンサーの発言などを問題視し、偏向報道だと反発。BPOへの申し立ても示唆したのです。そのためTBSさんの開票特番に参政党は協力しないのかと思っていましたが、意外なことにスペシャルキャスターとして出演した爆笑問題の太田光さんのインタビューに神谷さんは応じ、和気あいあいと会話を続けたのです」
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