「安倍政権はなぜ“勝ちすぎ”が可能だったのか」 政治状況を一変させてしまった参政党の地上戦
ステルス増税
「石破氏自身は少数与党として“丁寧な対応を”と言っていましたが、国民民主の玉木雄一郎代表は恨み骨髄とばかりに“永田町の常識は世間の非常識”を可視化して世間に訴え続けてきました。実際には交渉の過程で国民民主側にも問題があったと思うのですが、それは当然一切口にしない。まるで“ずる賢いジジイたちが詐欺まがいのことをしている”とアピールするかのようなスタンスを取ったわけですね」(同)
むろんSNS上の流言飛語やイメージ戦略に踊らされる有権者ばかりではない。より本質的な問題が放置されてきたツケが回ったという面もある。
「現役世代をあたかもATMであるかのようにとらえる社会保険料の改悪が続き、ずいぶんと“ステルス増税”されてきたことが可視化され、今では広く認知されているように感じます。この点でも自公は搾取をしてきた側として今回、厳しい審判を受けたということになるでしょうし、年金生活者の暮らしを支えられる現役世代が足りないのは自明だったのに手をこまねいてきた不作為の責任もつきつけられたのではないでしょうか」(同)
世界の与党は軒並み敗退
約束を守らず、こっそり搾取をし、物価高を収めきれず、裏金問題への説明も足りず、日本の停滞の元凶を作り……と重なれば太刀打ちできる政権はないだろう。選挙戦略以前の問題である。
それにもかかわらず、石破首相就任以来、特に安倍首相に共鳴していた議員らは政権批判を繰り返してきた。内輪もめをしている姿を嫌う有権者がいたであろうことは想像に難くない。
実のところ「失われた30年」の中で最も長く政権を担当していたのは、間違いなく安倍首相なのだが、その点への反省も見られないまま、現在のトップを引きずりおろそうとしていたわけである。
「トップの責任論が出るのは自然な流れなのですが、昨年、主要先進国の与党は選挙で軒並み敗退しているのも事実。負けが込んでいるとはいえ何も日本に特異な現象ではありません」(同)
今後、日本をどんな状況が待ち構えているのだろうか。
減税ポピュリズム一直線
「アメリカでは先日、大型減税や不法移民対策を盛り込んだ法案が可決されましたし、参院選で与野党は給付金や減税を訴えました。“減税ポピュリズム”は世界のトレンドですね。今回は自公が敗れ、野党が主張した消費税減税も各党それぞれ内容が異なっていて集約するのは難しいとなると物価高対策として給付金配布や減税が成立しない可能性はありますが、そう遠くないタイミングで行われる衆院選では減税ポピュリズムが顔をのぞかせるはずです。財源は赤字国債の発行になりますから、さらなるインフレ圧力にさらされ続けることになるでしょう。もちろん日銀はどこかで利上げを決断せざるを得ないわけですが」(同)
石破氏は給付金の財源について税収の上振れ分を回すと説明していた。実際、法人税、消費税、所得税といった税収は増加しており、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字は大幅に拡大したコロナ禍の時期から縮小し、プラスに転じることも視野に入りつつある。
「税収の上振れは事実で、それはウソではなかったわけですが、近い将来についての言及はありませんでしたね。現在の政治状況がしばらく続くことを前提にすれば、経験したことのないレベルのインフレが日本を襲う可能性もありそうです」(同)
減税で「得した」と思っても、それを超える物価上昇が起きるリスクがある。そのシナリオを国民に説く政党は現れるのだろうか。
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