「解体した胃や腸の中は米ばかりで…」 “季節外れ”のクマを人里に引き込んだ“ドングリの大凶作”

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人口減がクマと人を近づける

 不幸な事故が起こるのは何もクマ側の都合に限った話ではない。農業従事者の減少も人里慣れしたクマを生み出す一因になっているという。

「近年は地方の人口減に従って農業従事者も減ってきています。その影響で今まで畑や田んぼだったところが耕作放棄地になることが増えている。農地は作物を育てている間は人の手が入って整備されますが、放棄されると雑草が繁茂します。山際の農地が放棄されてしまうと山と里の境界線がなくなってしまい、クマ視点で山からアクセスしやすい状況になるんですね」

 最近では「アーバンベア」と呼ばれる市街地に突如出現したクマのニュースもよく耳にするが、

「川を伝ってクマが街に下りてくる例もあります。川のまわりの河畔林が整備されずに雑草が繁茂すると動物の通行道路になります。見つかりにくいですからね。それで考えられないような街中にクマが急に出てくるということも増えています」

 クマによる事故を減らすためには、適度な距離を維持するのが大切だと山内氏は語る。

「耕作放棄地の多い山間部では、里と山を区別するための草刈りをしたほうがいい。クマは利口なので、こまめにやると境界を理解して出てこなくなりますよ。これは一軒の農家だけでやってもまわりがやっていなければ変わらないので、集落全体で取り組む必要があります。例えば、柿のようなエサになる樹を切ってしまうのもひとつの策です」

デイリー新潮編集部

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