「被害者を助けるように、一匹の白い野良犬が現れたが…」 北海道ヒグマ襲撃事件、“地獄絵図”の一部始終 

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【全2回(前編/後編)の前編】

 先月末から住宅地でクマが人を襲う悲惨な出来事が全国で相次いでいる。ついには北海道が初めてとなる「ヒグマ警報」を発出。ことの発端は、ヒグマが深夜に新聞配達員を襲った死亡事故だった。第一通報者が見た地獄絵図は、もはや対岸の火事とはいえないのだ。

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 登山や釣り、山菜採りなどで山林に入った人間を襲うならまだしも、住宅地で普通に暮らす人間がクマの餌食になる物騒な出来事が、立て続けに起きている。

 死亡事故を受けて、北海道は2022年の制度創設以来初めて「ヒグマ警報」を発出した。住民や観光客に警戒を呼びかけるもので、対象地域は道南にある福島町の全域だ。人口は約3300人。かの横綱・千代の富士の故郷でもある港町には、かつてない緊張感が漂う。

 町内の三岳(みたけ)地区で今月12日、ヒグマに襲われた新聞配達員の佐藤研樹(けんじゅ)さん(52)が、変わり果てた姿で発見された。草むらに隠されるように倒れていた被害者の体には、腹部を中心にかまれた痕跡があった。

「クマの体の下に人間の腕らしきものが」

 襲撃現場は、役場や交番、消防署のある町の中心部から1キロ圏内にある住宅地。周辺には学校や介護施設、スーパーやコンビニもあって車の往来も多い。

「人間の呻き声、“うわぁ~”というような悲鳴が聞こえて、なんだべと思って玄関の扉を開けたら目の前にヒグマがいた。距離は2~3メートル。怖かったよ」

 そう振り返るのは、警察への第一通報者となった笹井司さん(69)である。

「最初パッと見た時は黒い塊しか見えず、クマがいるだけだと思った。だけどもよく見れば、クマの体の下に人間の腕らしきものがあって、たまげた。人に覆いかぶさっていたんだ。自分が大声を上げてもクマは振り返りもしない。それで警察に通報したんだ」(同)

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