「被害者を助けるように、一匹の白い野良犬が現れたが…」 北海道ヒグマ襲撃事件、“地獄絵図”の一部始終 

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「ものすごいスピードだった」

 携帯の履歴を見せてもらうと、110番は午前2時53分に発信されていた。

「通報の最中、クマは佐藤さんの体を口でくわえた格好で、あっという間に草むらの方へと引きずり込んでいった。ものすごいスピードだったよ」(笹井さん)

 その後の現場検証で、クマは遺体が発見された草むらまで約100メートルもの距離を引きずっていたことが分かった。体長1.5メートルほどのヒグマとみられる。

 第一通報者の隣人・柏崎進一さん(53)は、大きな物音で目が覚めたと明かす。

「叫び声が聞こえて、何事かと家の2階にある窓から外を見たらクマと目が合った。恐怖ですぐには体が動かなかったですね。玄関に置いてある金属バットを持ち外に出たけど、クマと戦うのははばかられました。襲われた人は、クマの攻撃を払い除けようと必死に体を動かして、抵抗しているように見えました」

被害者に助太刀するかのごとく、一匹の白い野良犬が

 そんな被害者に助太刀するかのごとく、一匹の白い野良犬が現れたという。

「ワンワンと吠えながらクマに飛びかかったのですがね。クマはフンッとばかりに腕で犬を一撃して吹き飛ばしてしまいました。クマが通った塀や道の上には血が飛び散った跡がついていた。近所の人から、佐藤さんの靴や靴下が方々に落ちていたと聞きました」(柏崎さん)

 前出の笹井さんも、

「玄関前に敷いた砂利は赤く染まり、血痕が30センチ四方に広がっていた。通路脇の塀にも点々と血が付いていたね。あの日、俺がコンブ漁の手伝いに行くため準備している時に、玄関先で自転車のスタンドを立てる音が聞こえた。ああ、新聞を配りに来てくれたんだと思ったら、人の叫び声が聞こえて……。ポストにはちゃんと新聞が入っていたから、佐藤さんはウチに配ってくれた後、襲われてしまったんだよ」

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