日本酒を造りたくても造れない…新規免許「70年ナシ」のなぜ 規制を逆手にとった新ブームとは

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 日本酒業界では、約70年間ものあいだ、国内向け製造の新規免許がいっさい認められていない。この「岩盤規制」とも呼ばれる厳格な掟には変化の兆しが表れているが、こうした障壁を逆手にとったユニークな試みも現れて――。新潟大学経済科学部教授で、日本酒学センター長の岸保行氏が解説する。

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日本食ブームで日本酒の海外消費量は成長中

 日本酒の国内消費量は1973年の約170万キロリットルがピークで、今はその4分の1の約40万キロリットルにまで減少している。

「高齢化が進み、これまで日本酒を好んで飲んでいた世代がいなくなってしまったのに加え、1970年代から比べるとアルコールの種類が多様化した影響も考えられます」

 そう解説するのは、新潟大学日本酒学センター長の岸保行氏だ。

「そもそもアルコールの消費量自体が減ってきています。これは先進国に共通して見られる兆候で、実はフランスでもワインの消費量が減っています。国が豊かになって成熟してくると、やはり皆さんなるべく長生きしようと健康志向になります。日本でも『健康寿命が大事』みたいに言われるようになると、アルコールはどうしても悪者に見られがちです」(岸氏)

 ところが、そのようにして国内市場がシュリンクする一方で、日本酒の輸出量はここ10~20年で伸び続けているという。

「契機になったと言われるのが、2013年の『和食』のユネスコ無形文化遺産登録です。和食が無形文化遺産に登録されたことや、“肥満大国”と呼ばれるアメリカで『日本食ブーム』が起きたことで、日本食レストランが一気に増えました」(同)

 農林水産省の調査によれば、2023年の調査結果で海外の日本食レストランの数は約18万7000店で、前回2021年から約20%も増えている。

「日本から輸出される日本酒がどこで飲まれるかというと、輸出量の6~7割ぐらいは日本食レストランで飲まれています。つまり、日本食レストランが増えるのに合わせて、日本酒の海外需要も伸びてきているのです」(同)

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