観測史上最高の猛暑で注目すべき 買ってはいけない「酷暑マンション」の見分け方
西向き・東向きの住戸は「夏は暑く冬は寒い」?
さて、マンションと気温との関係を考えた時、真っ先に思い当たるのは「日当たり」だろう。
「南向き住戸は、夏は涼しく冬は暖かい」――マンション広告でよく目にするフレーズだ。
一方で、西向きや東向きの住戸は「夏は暑く冬は寒い」と言われるが、実際はどうなのだろうか。
4方位の壁面がそれぞれ受ける日射量を計算し、1枚のグラフにまとめてみた(次図)。
注目すべきは、直射日光が消えた夕方以降も、大気中の雲やチリなどを反射する「天空放射」が残っている点だ。この天空放射により、壁面は熱を蓄え続ける。そして、特に西側のコンクリート壁は、日中に蓄えた熱を夜間にじわじわと室内へと放出し続ける。
これが「夜になっても部屋が暑い」現象の正体だ。
図を見ると、東壁面も西壁面も「壁面日射量」は同等であることが分かる。では、なぜ「西日」の差し込む部屋の方が圧倒的に暑く感じるのだろうか。
答えは「時間差」にある。午後になり気温が高くなっていることに加え、建物や地面も既に熱を十分に蓄えている。そこへ西日が追い打ちをかける。周囲の環境熱がピークに達するタイミングで、西日の日射が差し込む。その結果、体感の暑さも最大化されるのである。
「酷暑マンション」を見分ける重要なポイント
だが、すべての西向き・東向き住戸が「酷暑マンション」というわけではない。実際には、設計の良し悪しにより暑さの度合いが変わってくるからだ。
猛暑の時期、階数や窓の大きさが同じでも、他の物件よりも室内が暑くなる「酷暑マンション」を見分ける重要なポイントがある。
それは、「バルコニーの奥行き」である。
上階のバルコニーは、自分の住戸にとって「庇(ひさし)」の役割を果たす。奥行きが深ければ、日差しの侵入を防いでくれる。
たとえば東京にある西向き住戸の場合、夏至の時期にバルコニーの奥行きが2mだと、午後3時以降リビングに西日が入り始める。だが、奥行きが0mとなると、12時からリビングに直射日光が差し込む(次図)。
同様に、南向き住戸であっても、バルコニーの奥行きが不足していれば、日差しを防ぎきれない。たとえば夏至の東京で、奥行き2mのバルコニーがある場合は、西日は遮られるが、奥行き0mだと8時半から15時まで最大約0.5mの日差しが入る。
冬至の正午では、奥行き2mのバルコニーで日差しは2mであるのに対して、奥行き0mであれば4mに倍増する(次図)。
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