40℃の猛暑でも、クーラーが設置できない…「杏」が嘆いたパリの夏 「エアコン禁止」の理由を現地ジャーナリストが解説

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時間がかかる冷房対策

 都市冷房は、すでに美術館、国会議事堂、官公庁、病院、公共施設、ホテル、ショッピングセンター、オフィスなど867棟の建物に導入されている。都市冷房されているルーブル美術館やレ・アルのショッピングセンター、副都心の高層ビルに入ったことがあるが快適だった。

 もっとも、このシステムとは若干違うが、昨年開催されたオリンピックの選手村はクーラーなしでも大丈夫だという謳い文句で、地下水を使った冷却システムがつけられたが、窓を開けて寝たり家の中でじっと我慢したりするわけにはいかないアスリートには無理で、急遽、ポータブルエアコンを手配することになった。

 今、パリの都市暖房は4分の1の建物をカバーしているというが、いずれ都市冷房もそうなるのであろう。ただし、都市暖房と都市冷房とは全く別のシステムで進められているので、都市冷房の普及にはまだまだ時間がかかるだろう。

 杏さんは「命にかかわる問題なので、これから何かしらの対策がなされていったり、クーラーの条例が緩和されたりするのかと思うんですけど……」と希望的に語っているが、残念ながら当分緩和されることはないだろう。早くポータブルエアコンを購入されることをお勧めしたい。

広岡裕児(ひろおか・ゆうじ)
ジャーナリスト。1954年、神奈川県出身。大阪外国語大学フランス語科卒業後、パリ第三大学映画学科に留学。その後、フランスに留まり、フリージャーナリストおよびシンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめさまざまな業務、研究報告、通訳、翻訳に携わる。

デイリー新潮編集部

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