ともに66歳で早大と慶大出身、フジ「社長候補」だった同期入社のライバル、分かれた明暗

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誰が真の責任者か

 もっとも、大多氏を庇う声も多い。

「大多さんは日枝さんから視聴率回復を強く期待されていた。しかしヒット番組は簡単には生まれない。だから過去に視聴率を取った番組のリメイクを連発したのではないか。日枝さんは2022年に自分の指名で就任した前社長の港浩一さんに対しても『1年で(視聴率を)なんとかしろ』と命じていた。そんなの無茶。日枝氏に期待されると窮地に追い込まれた」(フジ関係者B)

 鈴木氏は2015年、57歳で専務に昇進する。社長の座が見えたはずだが、「はっきりと意見を言うから日枝氏に疎まれた」(フジ関係者B)。日枝氏はイエスマンしか好まない。鈴木氏は大功労者でありながら、2017年にはテレビ西日本の社長を命じられる。

 テレ西は有力系列局だが、筆頭株主が資本の異なる西日本新聞社であるため、フジからの社長はやりにくい。それでも鈴木氏は自然災害報道に力を入れるなど自分の色を出した。

 6月末、鈴木氏はスタートエンターテイメントのCEOに就任した。同社は快哉を叫んでいるだろう。フジの社長になるはずだった人材を得られたのだから。同社の所属者はテレビを足場としているが、前CEOの福田淳氏(59)はその世界に強いとは言いがたかった。

 鈴木氏が体育会系であるところも男性集団の同社に合っているはず。なにより、日枝氏の意向に左右されずに仕事ができることが鈴木氏には喜ばしいのではないか。

 一方、大多氏は2022年に63歳で専務になるが、2024年に系列局の関西テレビの社長に転出する。「もちろん日枝氏が決めた」(フジ関係者B)。日枝氏は今年3月末に取締役相談役を退任するまで、局長以上と子会社社長、一部系列局社長を1人で決めていた。

 フジは初代から現在の清水賢治氏(64)まで14人の社長がいるが、系列局の社長経験者は1人だけ。それでも関テレの筆頭株主はフジ・メディア・ホールディングス(FMH)で、役員の交流もあることから、大多氏のフジ社長の目は十分あった。

「大多さんはあくまで日枝さんの秘蔵っ子だから」(フジ関係者A)

 もっとも、専務時代に当時の社長・港浩一氏と一緒に対処した中居氏と女性アナのトラブルにおいて、大きなミスを犯し、5月に関テレ社長を辞任したのは知られているとおり。

 日枝氏は港氏に視聴率アップを命じていた。その部下だった大多氏もプレッシャーを感じていたはず。日枝氏という絶対権力者の存在がなかったら、人権侵害問題は違った進展を見せていたのではないか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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