事実婚で娘が生まれた、けれどもやっぱりクズはクズ…? 45歳男性が崩れ落ちた “妻”からの非情5文字
変わった父親で…
彩友美さんは結婚できると思ったのだろうか。自宅に招待すると言った。だが彼は父親の経営する会社を聞き出し、連絡をとって会いに行った。
「つきあっているつもりはないが、そういう関係になってしまった。彼女のために僕とは縁を切ったほうがいいですと正直に言いました。父親は『あの子は昔から変わっているところがあった。でもあんたも変わってるね。わざわざそんなことを言いに来るなんて』と笑っていました。この父親がものすごく器の大きな人で、娘との年齢差は問わない、あんたにやる気があるならうちの会社に来ないかとまで言い出した。娘に負けず劣らず変人でしょ」
そんな気はないと断ったが、「惜しいな。あんたみたいなおもしろい人に働いてもらいたいのに」と父親は心底、残念そうだったという。
「あまりに熱烈に口説かれたので、オレも揺れましたよ、正直言って。この年でうだつがあがらないところに、そんなチャンスが舞い込んでくるとはびっくりしたし。だけどいくら婚姻届を出していないからといって、真希子をそんなふうに裏切ることはできない。人としてどうよという話ですよ。それも正直に言いました。そうしたら、ますます惜しいと言われたけど」
世の中には変わった人がいるもんだと彼はフフッと笑った。ずっと話を聞いてきて、なんとなくわかったのは、彼は人としてどこか魅力があるということだった。経営者である彩友美さんの父親も、類い希な彼の魅力に気づいたのかもしれない。
「結局、彩友美さんをオレに近づけない、借金は少しずつ返すということで話がまとまったんですが、その晩は彼女の父親と深夜まで飲みました。楽しかった」
とうとう“妻”にばれてしまい…
だが、父親は娘への説得に失敗したらしい。翌日の深夜、真希子さんからいきなり「今からうちに来て」とメッセージが入った。
訪ねてみると、「今日、彩友美さんが私の勤務先に来た」と言う。「あなたは拓真さんと結婚してないんですよね。だったら私に拓真さんをください」と詰め寄られたそうだ。
「びっくりして、なんだそれと大きな声を出してしまった。真希子は『しっ』と口に指を当てた。娘が起きるから静かにしろって。オレは彩友美と一緒になる気なんてないと言ったけど、真希子は『だけど彼女はあなたをあきらめないと思うよ』と冷静でした。そしてその言葉通り、彩友美は週に2回くらい部屋にやってくる。父親に連絡をとると来なくなるけど、しばらくするとまたやって来る。そんなことが半年ほど続いて、オレももう疲れちゃって。彩友美にはもちろん、父親に会ってからは手を出していない。やむをえずあるとき、『オレはきみにまったく興味がない。ごめん』と手をついて謝りました。傷つけるのはわかっていたけど、そうするしかなかった。父親にはすぐ連絡しておきました」
その後、彩友美さんが心を病んで入院したと父親から連絡があった。何でも自分の思い通りになると勘違いしたのは自分たちの教育も悪かったと思うと父親は言ったそうだ。確かに器の大きな人である。
「つまらない」
「やっとホッとして、少しの間、訪ねていなかった真希子のところへ行ったら、なんともぬけの殻。引っ越したのかと連絡したら、『転勤になったの』と。どうして教えてくれなかったんだと言うと、『教える義務はないよね』って。しつこく聞いたら、転勤は真希子の希望だった。実家近くの営業所に空きができたので、そちらで勤務できるよう頼んだそうです。娘はオレに会いたがっているはずだと言ったら、『じゃあ、たまには会いに来てよ』と。妙にあっさりしてましたね」
我慢していた真希子さんが、ついに爆発したのかと思ったし、拓真さんもそう予想していたのだが、そうではないと真希子さんは言ったという。
「無意識のように女を誘うあなたを、私はそういう人だからと受け止めてきた。でもここ数年、そういうあなたに魅力を感じなくなった。人は変化するものだと思っていたけど、あなたは良くも悪くも変わらない。つまらない」
バシッと引導を渡され、拓真さんは膝から崩れ落ちたという。まいったなと思ったと彼は言った。
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