事実婚で娘が生まれた、けれどもやっぱりクズはクズ…? 45歳男性が崩れ落ちた “妻”からの非情5文字
「仕事部屋」に泊まって感じたさびしさ
「オレは真希子とずっと男と女でいたかった。でも女性はそうはいかない。子どもが生まれれば子ども優先になる。それはわかってました。子どもを一緒にかわいがればいいんだし、成長すればまた男女の関係に戻れるとも思ってた。頭ではそうわかっていても、心が無理だと叫んでいた。オレは真希子に“母”を見たくなかったんだと思う。身勝手な話ですが」
忙しくなったので仕事部屋が必要だと、自宅から徒歩5分程度のところに小さな部屋を借りた。今日中にやらなければいけない仕事があると真希子さんにメッセージを送って、その部屋に初めて泊まった晩のことを彼は忘れない。
「寂しかった。でもこれがオレなんだという実感があった。かっこつけてるわけじゃないんですよ。寂しいは自由だと同じこと。寂しくなくて満たされているより、寂しいけど自由だと思えるほうがオレには大事だった」
孤独を愛するといえば聞こえはいいが、そんなかっこいいものではない。ひとりでいる時間をたっぷりとらないと自分が腐っていく気がするのだと彼は真顔で言った。自分の孤独を感じながら音楽や映画や絵のことを考える。金持ちにはなれなくても、そういう時間を手放したくなかった。だが、それをきちんと真希子さんに伝えようとはしなかった。伝えようとしないというよりは、伝えることに意味を見いだせなかったと彼は言う。
「でもね、バカは死ななきゃ治らないというのは本当だと思います。そのうち、外で声をかけた女の子をその部屋に連れ込むようになって……。ダメでしょ、そういうの」
思わずそこで吹いてしまった。自分でダメでしょと言っている彼の愚かさが、なんだか愛おしくなったのだ。人間ってそういうものですよねと思わず共感してしまう。ダメでしょと自分にダメ出ししながら、愚かな行為を繰り返す。
「真希子は賢い女性だから、オレの部屋を訪ねてくることはない。万が一、来るなら連絡してからだ。そう信じていました。そして実際にそうだった」
父親という意識は低い
2日に1回は、拓真さんから真希子さんを訪ねた。娘と3人で遊び、ほんわかとした楽しい時間を過ごす。だが、日がたつにつれ、拓真さんが真希子さんのところに泊まることはなくなっていった。どんなに遅くても自室に帰った。
「真希子の素敵な母親ぶりを見て、ああ、もうオレがいなくてもいいんだなと思っていました。皮肉でもいじけでもなく、母と子はふたりで完結している。それでいいんじゃないかと」
真希子さんが育休から仕事に復帰すると、彼は朝、必ず保育園に娘を送っていった。娘にだけは責任を果たしたいと思っていた。それは「直接的な父親としての責任」というより、真希子さんの人生に関わってしまった責任だと彼は言う。娘のためではなく、真希子さんを助けるために送っていったのだ。父親という意識は低いんでしょうと彼はつぶやいた。
「子どもはいるけど独身だよ」
そんなこんなでも生活は続いたし、真希子さんとの縁も途切れはしなかった。彼女は、娘の父親として彼を意識していたのだろうが、彼は変わらず、真希子さんに「母」ではなく「女」を見いだそうとしては失望を重ねていった。それでも真希子さんと離れるつもりはなかったという。
「2年くらい前かなあ、世話になった先輩がお金に困っていたので、僕がある女性から借りて渡したんですよ。その女性は音楽関係の人で、言ってみれば親が大金持ちのお嬢さんだった。300万でした。その先輩は助かったよと言ってくれたけど、その直後、失踪してしまった。いろいろ事情があったみたいだし、そういうことになるんじゃないかとは思っていたから、それほど驚かなかった。なんとか返していこうと思いましたし、友人知人もカンパしてくれたので半分は返しました。まあ、そうやってぐちゃぐちゃしている間に、その女性と関係をもってしまったんです」
女とみれば……という癖は抜けないのだろう。彼は彼女に「子どもはいるけど独身だよ」と言った。それは事実だ。どうせすぐに自分に見切りをつけて去っていくだろうと踏んでいたのだが、彩友美さんというこの女性は違っていた。
「押しかけてきちゃったんですよ、オレの部屋に。誰とも一緒に住む気はないし、ここはオレの城だからと追い出したけど、週に数回は来るんです。彼女は30歳になったばかり。そんな若い女性が、オレと関係を持つためだけに部屋に来る。追い出されてもまたやって来る。なんだかだんだんせつなくなってきて。彼女のためには、オレなんかとは縁を切ったほうがいいに決まってる。だから彼女に『親御さんに会わせてほしい』と頼んだんです」
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