髪を洗って爪まで切って、ご奉仕もするヒモ暮らし… 四十手前の「クズ男」を動かした女性の言葉

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【前後編の前編/後編を読む】事実婚で娘が生まれた、けれどもやっぱりクズはクズ…? 45歳男性が崩れ落ちた “妻”からの非情5文字

 トラブルがあったときに「女性にはかなわない、女性は偉いよ」「男なんて女性の足元にも及ばない」などと、対峙もせずに逃げるようなことばかり言う男がいる。一見、女性を持ち上げているように思えるが、これはこれで「正面から向き合って一緒に歩くことを拒否」する姿勢にも感じられる。対等の関係を否定しているわけだから。

「オレ、ほんっとにクズなんですよ。借金はあるし人間関係はグダグダだし。クズ男だなと自分で思いますから。いい年して恥ずかしい」

 横河拓真さん(45歳・仮名=以下同)は、妙に説得力のある低音でそう言った。言ってからこちらの判断を仰ぐようにじっと見つめてくる。若いころからモテてきたのだろうなとすぐにわかる。

 職業も「不定」だという。音楽をやったり写真を撮ったり絵も描くが、「どれも鳴かず飛ばず。便利屋みたいに生きてきた」そうだ。WEB制作などもできるので、あちこちから仕事を請け負っては納品する。小さなワンルームの古い賃貸マンションで暮らしているが、いつもギリギリで生活していると笑った。

学校になじめなかった

 東京郊外のサラリーマン家庭に長男として生まれた。3歳違いの弟がいる。弟とは20年以上連絡をとっていない。噂では弟は結婚して実家をリフォームし、子どもにも恵まれて母と同居しているという。父が10年前に亡くなったときも、拓真さんには連絡がなかった。そもそも拓真さんが自分の連絡先を家族に伝えていなかった。

「育ったのはごく普通の家庭だったと思う。母は口うるさかったし、物心ついたときは弟ばかりかわいがっていたけど、別に虐待されたとか、ネグレクトされたとも思ってない。家庭というのもある意味で“組織”じゃないですか。そういうものになじめなかった。もちろん学校にもなじめなかった。小学校高学年で、すでに登校するふりをして公園にいたりしていましたね」

 親に泣かれたため、登校するようにはなったが勉強には身が入らなかった。中学時代も同様だったが、それでも高校には合格した。「地頭がいいからね」と彼は笑った。

「一応、大学にも入学したんですよ。だけどすぐに行かなくなって、ジャズ喫茶とか当時の文化人が集まるようなクラブに潜り込んで……。楽しかった。大人ってかっこいいなと思いました。オレもかっけー大人になりたいと思った」

 ところが当時、仲よくしていた大人たちの中には女にも金にもだらしない男たちがたくさんいた。拓真さんはそれすら「かっけー」と思ったらしい。

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