髪を洗って爪まで切って、ご奉仕もするヒモ暮らし… 四十手前の「クズ男」を動かした女性の言葉

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とある女性からの説教で

 そのとき、ときどき泊まらせてくれていた女性のひとりである真希子さんが、毎日病院に来てくれた。流浪の人生に疲れたのか、眠ってばかりいた拓真さんだが、目を覚ますと彼女がいた。彼女が微笑んでくれるとまた安心して眠りについた。

「結局、2ヶ月近く入院して手術だリハビリだとやったんですが、そろそろ退院の目処がたったころ、『拓真が帰ってきても、うちには入れないから。他の女性のところへ行きなさいね』と真希子が言うんです。でも見舞いに来てくれたのは真希子だけ。オレに他にどこへ行けって言うんだよと言ったら、『そろそろ自立しなさい』って。『年齢の問題じゃない。あなたは自立が怖いんでしょ。自分の人生から逃げてるんだよ。音楽がやりたいなら音楽に没頭しなさい、写真やりたいなら必死にやりなさい。便利屋として重宝されたいなら、もっと徹底的に便利屋になりなさいよ。すべてに中途半端なんだよ』と怒られた。確かに真希子の言うとおりだから、オレは何にも言えなくて。私のところに来たら、ずっと文句を言い続けるよ、うっとうしかったら今のうちに逃げなさいって。入院費用も彼女が立て替えてくれたけど、退院時、彼女は病室には来てくれなかった」

 費用だけ払ってさっさと帰ったのだ。だがそんな真希子さんに拓真さんは惚れ直したという。自分のような適当な人間は、こういう女性といるべきだろうと判断したのだ。

 ***

 40歳を控え、拓真さんは“運命の女性”に出会ったようだ。だが……。【記事後編】では、真希子さんとの暮らしと、それを拓真さん自身の振る舞いによって崩壊させてしまう顛末を紹介する。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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