「地方のファミリー層はイオンで休日を過ごす」は都市伝説…地方在住のネット編集者が明かす「都会人はフラペチーノ片手にショッピング」と同じくらいの“誤解”

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地方民の休日の過ごし方は多様

 父親は審判員として駆り出されることもあり、春~秋の野球シーズンはとにかく忙しい。試合に勝てば勝ったでその晩は繁華街に繰り出して祝勝会をしたりもする。私の友人は男の子3人を育てているが、長男は高校3年生、次男は高校1年生、三男は中学1年生である。となると長男が野球を小学校4年生から始め、高校3年生までの9年間が終わったとしても、その段階で中1の長男はあと5年間野球漬けの週末が続くのである。イオンに6時間行っている暇などない。

 他にやることといえば、釣りとBBQである。そこら中に漁場があり、イカ・アジ・キス・カマス・クロダイ・カサゴ・キジハタ・真鯛・穴子などを釣ることができる。知人で船を持っている人も時にいて、そうなると1時間ほど船に乗ってカンパチやヒラマサやブリを狙う。時にマグロを釣ることもある。女性の場合は、実家の母親が近くに住んでいるため、女の子を連れて祖母・母・孫の3世代で温泉へ行ったりする。

 野球がなく家族全員が揃っている時などは、長崎県佐世保市へ行きアジフライを食べたり、或いは博多までショッピングに行ったりする。決して「地元のイオンで時間潰し」ではないのだ。とはいっても、イオンがイベント開催の中核になることはあり、昨年は世界唯一のNPOプロレス団体「九州プロレス」がイオンの駐車場で興行を行った。こうした時は多くの人がイオンで過ごすこととなる。

「田舎者は休日はイオンで過ごす」という固定観念は、我々地方民が誤解しがちな「都会者は休日はライブをハシゴして109と伊勢丹でショッピングをする。そしてリラックスするために水タバコを吸いアロマテラピーをしている」というものと同じで、幻想なのかもしれない。地方も都会も関係なく、日本人はもう少し多様な休日の過ごし方の選択肢は与えられているのだから。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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