「新宿タワマン刺殺」裁判傍聴ルポ 和久井学被告はなぜ犯行現場に「バイアグラと催涙スプレー」を持参したのか 検察は「疑似恋愛と認識していたはずで結婚詐欺ではない」
昨年5月、東京・新宿のタワーマンションの敷地内でガールズバー元経営者A子さん(当時25)が殺害された事件の「裁判傍聴ルポ」後編。被告人質問で、検察官は和久井学被告(52)が語ったストーリーの「疑問点」を鋭く突いた。(前後編の後編)
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【写真を見る】和久井被告とA子さん。どう見ても不釣り合いなのになぜ和久井被告は「結婚できる」と思ってしまったのか
シャンパンタワーを入れたのにVIP扱いしてもらえず
【「新宿タワマン刺殺」裁判傍聴ルポ 被害女性は「ナメクジ以下でも貸してくれるサラ金に行け」と和久井学被告を罵倒しながら貢がせていた “落ち度”は酌量されるべきか】からの続き。
前編では弁護人による被告人質問の最中、和久井被告が急に泣き出して質問に答えられなくなり、休廷を挟んだところまでを伝えた。
その後、弁護人による尋問で和久井被告が語った内容のあらましは下記のとおりだ。
A子さんの「私の夢のために人生をかけてくれたら結婚する」という言葉を信じて、「命の次に大事」な車とバイクを売って1600万円を手渡し、週3回の頻度でAさんが経営する店に通い詰めた。
21年12月、22年1月、2月、3月と計4回シャンパンタワーを入れたが、途中で“前金”の1600万円は使い果たし、さらにクレジットカード会社や消費者金融から借金を重ね、それも限度額に達し、店に通いづらくなった。この間、アフターの約束を破られ、シャンパンタワーを入れたのにVIP扱いしてもらえずに自分の席にほとんどついてくれないなどのひどい扱いを受けた。
最後にシャンパンタワーを入れたのはA子さんの誕生日だった3月22日。その翌日、A子さんがライブ配信で自分を指す言い方で「迷惑な客がいる」と話しているのを聞いて、騙されたことに気づいた。金を返してもらおうと連絡し続けたが、音信不通になり、店や自宅マンションに行ったが会えなかった。当時は別れたと聞かされていたA子さんの元結婚相手のB氏にも掛け合ったが、話し合いの場は設けてもらえなかった。
ネットバンキングで騙された金を送金させるつもりだった
22年5月にストーカー規制法違反で逮捕され、不起訴になり釈放された後は、残った借金の返済のため、毎月15万円から25万円を支払い続けた。債務整理をしようとも思ったが、借りた金はちゃんと返したいと思って踏み切らなかった。
犯行当日は、金を返してもらう目的でA子さんが住む新宿のタワマンに向かった。A子さんが出てきたところを、持っていた果物ナイフで「騒ぐな」と脅し、A子さんの部屋まで案内してもらい、ネットバンキングを使って騙された金を送金させるつもりだったが、A子さんが「助けて」と騒いで逃げ出してしまった。
静かにさせようと押し倒してナイフで3回切りつけたが、騒ぎ続けて人が集まり出し、このままではまた逮捕されてあることないこと言われてしまうと思ってパニックになり、右腕、右足、右の脇腹など4回刺した。それ以降のことは覚えていないーー。
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