「日枝天皇」はいまだにフジグループ内に居座っていた 昇進する元「女性アナ」たちの行方

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組織改革の行方は

 なぜか番組名がクレジットされなかったものの、この映像は「週刊フジテレビ批評」の第1回(1992年4月17日)である。日枝氏の肝煎りでつくられ、日枝イズムが凝縮された番組だ。

 自己検証番組でありながら、身びいきに見えるところも日枝氏らしさか。ただし「視聴者とテレビ局がお互いに語り合い」という自らの言葉は忘れるべきではない。

「検証 フジテレビ問題」についてフジの現役、OBに意見を聞いたところ、「あんなもんでしょ」といった冷めた意見ばかりだった。最初から検証には限界があると考えていた。一方で2007年から13年まで社長だった豊田皓氏(79)を讃える声は複数あった。豊田氏が書面で敢然と日枝氏批判を行ったからである。

「役員も役員報酬も日枝氏が決めていた」(豊田氏)「1人が権力を長く握り続けると、権力におもねる取り巻きや茶坊主が増殖する」(同)

 豊田氏は母校の成城大時代にはラガーマン。入社後は希望の報道に配属されるが、組合に入ったため、左遷される。会社側から組合脱退を勧められたものの、「組合を辞めるくらいなら会社を辞める」と拒んだ。骨太の人である。

 また、複数の有為な人材をパワハラで潰してしまった疑惑のある元報道系上席取締役の件が扱われなかったことに強く憤る声もあった。取締役は日枝氏に目を掛けられていた1人である。やはり日枝氏がFCGに残ることへの疑問は消えない。

 再生を目指すフジは10日付で大規模な組織改革と人事異動を行う。新たに誕生する部署は、社内のあらゆるジャンルのリスクを掌握する社長室リスク管理部、法律相談や訴訟対応を行う法務統括局企業法務部、コンプライアンス意識の向上を推進するコンプライアンス推進局コンプライアンス推進部などである。

「室」から「局」へ格上げされるアナウンス局にはマネージメント・プロデュース部が出来る。特定の女性アナに番組からの出演依頼が相次ぐことがよくあるが、その調整などを行う。

 女性アナは目立つ存在であるものの、テレビ局もサラリーマン組織なので、ほかにも重要な仕事がある。自ら進路変更を希望する女性アナも少なくない。

「とくダネ!」(2021年終了)のサブキャスターなどとして活躍した森本さやか氏(47)は人事局人事部長に昇進する。ライン部長だ。会社の中枢である。

 バラエティ「となりのココロ」(2000年終了)のMCなどを担当し、人気のあった春日由実氏(50)は広報局企業広報部担当部長を続投する。番組をPRするのではなく、企業としてのフジへの取材依頼などに対応する。

 元アナではないが、社内外で話題なのが石田弘氏(81)。80歳を過ぎたものの、スタジオ戦略本部第2スタジオ制作センターのエグゼクティブプロデューサーを続ける。

 世間の雇用延長は大半が65歳まで。だが、フジは70歳過ぎても雇用が続くことがある。それでも80歳を超える人の雇用は異例だ。石田氏は現在、「ミュージックフェア」を担当する。音楽界の重鎮だ。

 かつては港氏の上司かつ盟友だった。数々のバラエティで仕事を共にした。「夕焼けニャンニャン」(1985年)と「とんねるずのみなさんのおかげです。」(1988年)は港氏がディレクターで石田氏がプロデューサーだった。

 ここにきて2人は明暗が分かれた。石田氏は日枝氏に買われていたものの、寵愛を受けたのは港氏である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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