「トランプ王朝」誕生か 国家が「ファミリービジネス」化、低所得者層泣かせの「美しい法案」成立…米国政治の機能不全が止まらない

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米国社会の基盤が浸食される法案

 7月4日、トランプ米政権の主要政策を盛り込んだ大型の減税・歳出法案が成立した。

 目玉は2017年に成立したトランプ減税の恒久化だ。この税制は所得税の最高税率を39.6%から37%に引き下げ、相続税などの基礎控除を倍増させる。いずれも納税額が多い高所得層が恩恵を受けるものだ。

 チップ収入や残業代の免除措置も盛り込まれているが、トランプ氏の支持者が多い低所得層には厳しい内容となる。財源捻出のため、メディケードと呼ばれる低所得層向けの公的医療保険の受給者に就労義務を課すなど制限が課せられた。

 これにより、今後10年間で約1兆ドル規模の予算が削減され、約1200万人が医療保険を失うと言われている。米国人の7人に1人が頼っている補助的栄養支援システム(SNAP、旧フードスタンプ)が縮小されるのも打撃だ。

 トランプ氏は「1つの大きく美しい法案」と称賛しているが、内実は米国社会の基盤が浸食される代物だと言っても過言ではない。

長期金利上昇が減税メリットを相殺か

 肝心の経済成長にも疑問が呈されている。トランプ氏は「ロケットのような経済成長を遂げる」と豪語したが、米議会予算局(CBO)は今年以降の経済成長率は年0.1%の押し上げにとどまると試算した。

 財政赤字の拡大による悪影響も心配だ。CBOは今後10年で財政赤字は3.4兆ドル増加すると見込んでいる。

 連邦政府の債務上限が現行の36兆1000億ドルから5兆ドルに引き上げられたことでデフォルト(債務不履行)に陥るリスクは当分なくなったが、国債の大量発行による長期金利(10年物国債利回り)の上昇は不可避だ。このため、長期金利の上昇が減税のもたらすメリットを相殺するとの見方が浮上している。

 特に若年層に対してはメリットよりもデメリットの方が大きいとされており、世代間の富の不均衡がさらに拡大するだろう。

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