「トランプ王朝」誕生か 国家が「ファミリービジネス」化、低所得者層泣かせの「美しい法案」成立…米国政治の機能不全が止まらない

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DOGE効果なし? マスク氏の政治的影響力は

 今回の減税・歳出法は問題だらけだが、政治的にはトランプ氏の大勝利だ。

 3日の下院採決の直前にトランプ氏の説得で意見を変える共和党議員が相次いだ。これまで公然と反対してきた財政強硬派もねじ伏せた様を見るにつけ、共和党は今やトランプ党と化したとの声が聞こえてくる。

 トランプ氏の目の上のたんこぶはイーロン・マスク氏だが、同氏の政治的影響力はもはやピークを過ぎたのではないかと筆者は考えている。

 マスク氏が主導したDOGE(政府効率化省)の活動実態が明らかになっているからだ。トランプ政権は1日、3月時点の連邦政府の職員数が230万人だったと発表した。DOGEの荒療治は現場に混乱をもたらしただけで、職員数はほとんど変わっていなかったのだ。リーダーを失ったDOGEは見る影はなく、存続すら危ぶまれている。

 経済の世界で超一流でも、政治は別物だ。カリスマ性を失ったマスク氏がワシントン界隈で再び権勢を振るうのは無理だろう。

 このように、トランプ氏は共和党員にとって「王」的な存在になった感がある。

トランプ家が牛耳るアメリカ

 トランプ氏の統治は「家産制」に依拠しているとの指摘がある。家産制とは父による家族の支配を意味する「家父長制」を国全体に拡張したシステムのことだが、それにより国家は巨大な「ファミリービジネス」となりがちだ。

 トランプ氏は2期目に入り、暗号資産(仮想通貨)業界に友好的な規制当局者を任命するなど、同業界への支持を鮮明にしている。

 この動きに呼応する形で、トランプ氏の一族が仮想通貨ビジネスへの傾斜を強めている。トランプ家のビジネスの中心は不動産から仮想通貨に移り、今や資産の4割が仮想通貨関連だと言われている。

 21世紀版ファミリービジネスとも呼べる動きに対して疑念の目が向けられている。

 監視の目が届きにくい仮想通貨取引が政権にアクセスする裏口ルートとして使われ、それが一族の資産をさらに押し上げるという危うい構図になりうるからだ。

 トランプ家が複数世代にわたって「政治王朝」を築こうとしているのではないかとの憶測も流れている。トランプ氏の次男、エリック氏(41)が6月27日、一族のメンバーにとって政治のキャリアに就くのは簡単だと語ったことが事の発端だ。

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