暑すぎて来ない客をどう呼ぶか 300万個ヒットも出た「酷暑」のコンビニが売るもの

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じつは今夏勃発している「戦争」が…!

 ちなみに購入したファミチキは、6月末から発売され、1週間で300万食を売り上げたという「ファミチキレッド」である。これは、ローソンのUber宅配などのサービスでは人気トップ3に入るロングセラー「からあげクンレッド」に対抗する商品といえるだろう。新商品ではないものの、セブン-イレブンも6月半ばから「ザクチキ(魅惑のうま辛)」のリニューアルを行っており、今夏、「コンビニ鶏のレッド戦争」が勃発しているのだ。

 なぜ、各社は辛系に力を入れるのか。前提として、先述のとおり酷暑によって人の移動が減るため、キャンペーン企画や品揃えが集客のためにより大事となる。そして「発汗によるクールダウン」「食欲増進」「うま辛トレンド」「刺激を求める消費者心理」などが複合的に作用して、辛いものへの注力につながっているといえる。

 また最近の市場では、“痺れる”タイプの辛さも流行中で、セブンでは「麻辣湯」や「麻辣湯麺」商品を中心に定番化してきている。花椒の痺れる辛さと唐辛子の刺激が、夏の食欲不振や暑さ対策に適しており、特に若年層や辛い物好きから高い支持を得ている。セブンでは、お店で揚げるカレーパンや、蒙古タンメン中本とのコラボ商品をかねてより販売しており、辛さの多様性には一日の長があるといえるかもしれない。

 それ以外の各コンビニでも、韓国料理やタイ料理など、エスニック系の品揃えも充実してきている。筆者がローソンの店長をしていた35年前、売り場にある辛い商品といえば、からあげクンレッドか湖池屋のカラムーチョくらいしか思い出せない。マクロの視点でいえば、地球が徐々に沸騰化していく過程で、店頭に辛系商品の品揃えが増えていった……のかもしれない。

秋以降への不安も

 酷暑商戦にのぞむコンビニ各社だが、秋以降の商品展開には不安もある。雨不足と高温障害で野菜が枯れる被害があり、生鮮を扱うスーパーほどではないにしろ、中食や加工食品の価格上昇に影響する可能性があるからだ。

 コンビニに限らずだが米の価格も気になる点だ。稲は7月下旬から9月初旬までの気温が高いと、米粒が小さくなったり白く濁ったりして、見た目や味、品質が落ちるほか、収穫量が減るという。そうなればコンビニおにぎりが200円を超えるのが当たり前になる可能性もある。

 酷暑はさまざまな複合的な変化を社会にもたらす。今後は、われわれがこの暑さと寄り添って生活しなければならなくなる時代だ。そうした変化にどうコンビニが対応し、新しい商品を開発し、どう顧客の利便性を高めていくのか注目だ。

 筆者自身は、毎日コンビニで赤城乳業の「ガリガリ君」(税込86円)を買い食いしながら、この酷暑をなんとか乗り切ろうと思っている。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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