今年は“超高校級左腕”が登場! 普通の公立高から突然、ドラフト候補が出てくる「愛知県立高校」の凄み

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 7月に入り、夏の甲子園出場を目指す高校野球の地方大会が本格化する時期になった。今年も全国各地に将来が楽しみな逸材がいるが、その中でもサウスポーでナンバーワンと言われているのが、芹沢大地(高蔵寺)だ。最速150キロを超えるストレートを誇る“超高校級左腕”で、4月にはU18侍ジャパン強化合宿に召集されている。その実力に加えて、話題となっている要因の一つが所属チームにある。【西尾典文/野球ライター】

強豪とは言えない高校から球界を代表するような選手が

 芹沢がプレーしている愛知県立高蔵寺高校は、現在、社会人野球で活躍している井村勇介(Honda鈴鹿)がエースだった2014年夏に愛知大会の準々決勝に進出しているものの、これまでに甲子園出場はなく、県内でも強豪ではない。

 現在のチームも、地区予選は突破したものの、昨秋は県大会の1回戦、今春も県大会の2回戦で敗れている。芹沢も中学時代は全く無名の存在であり、そんな選手が県立高校で高校ナンバーワンに成長を遂げたところに、大きな可能性を感じているスカウトが多いはずだ。

 過去を振り返ってみると、愛知県では、決して強豪とは言えない県立高校から、球界を代表するような選手が多く誕生している。

 往年の大選手で筆頭格と言えるのが、山内一弘(元・毎日など)だ。その出身校は愛知県立起(おこし)工業であり、2021年からは一宮起工科と校名が変更となっている。1915年に創立された100年以上の伝統を誇る学校だが、これまで野球で目立った実績はなく、プロ野球に進んだ選手は、山内だけである。

 そんな山内だが、社会人野球の川島紡績を経て、テスト生として毎日に入団。3年目にはレギュラーとなると、首位打者1回、ホームラン王2回、打点王4回に輝き、長く中心打者として活躍した。

 1963年オフには「世紀の大トレード」と言われた小山正明との交換要員で阪神へ移籍すると、1968年からは広島でもプレー。通算2271安打、396本塁打という実績を残して1970年限りで引退し、その後はロッテ、中日で監督として指揮を執るなど、長く指導者を務めた。

 山内と同じ尾張地区(愛知県西部)の県立高校出身の名選手としては、平野謙(元・中日など)も挙げられる。所属していたのは、愛知県立犬山高校で、平野の前にも本多逸郎、尾関釣、紀藤広光(いずれも元・中日)がプロ入りしているが、甲子園への出場経験はない。

 近年も2010年夏の愛知大会で5回戦に進出したのが、最高成績である。平野が所属していた当時も決して強豪校ではなく、投手、野手の両方で活躍したものの、2年夏の準決勝進出が限界だった。

 高校卒業後は、名古屋商科大で投手と外野手の二刀流で結果を残し、1977年のドラフト外で投手として中日に入団。怪我もあって2年目から外野手に転向すると、1986年には盗塁王を獲得するなどリードオフマンとして活躍し、その後トレードで移籍した西武でも4度の日本一に貢献した。引退後はNPBだけでなく社会人野球、韓国球界、独立リーグでも指導者として活躍している。

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