今年は“超高校級左腕”が登場! 普通の公立高から突然、ドラフト候補が出てくる「愛知県立高校」の凄み

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大選手への成長を期待

 プロ入り当初は先発でも起用されながら、3年目のシーズン途中からセットアッパーに定着する。4年目の2010年に47ホールドをマークして最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得すると、翌年には79試合に登板して7勝2敗10セーブ45ホールド、防御率0.41という驚異的な成績を残し、2年連続の最優秀中継ぎ投手だけでなく、シーズンMVPとゴールデングラブ賞にも輝いた。その後は怪我もあって成績を落とし、活躍した期間は短かったが、通算200ホールドはNPB歴代3位の記録である。

 一方、現役投手では、千賀滉大(メッツ)の名前が挙がる。出身の愛知県立蒲郡高校は110年を超える歴史を持つ伝統校。だが、野球で目立った実績はなく、千賀本人も野球部に入ることを決めて、入学したわけではなかったという。

 高校時代の千賀は、怪我もあって登板機会が少なかったものの、県内のスポーツ店の店主の推薦があって、ソフトバンクが2010年の育成ドラフト4位で指名した。プロ入り後にトレーニングに励むと、1年目の後半には150キロ以上をマークするまでに急成長。2年目には早くも支配下昇格を果たす。

 その後、中継ぎを経て2016年に先発に転向した千賀。そこから7年連続で二桁勝利をマークするなど、球界を代表する投手となり、2023年からはメジャーで活躍している。

 千賀以外の現役選手では、福谷浩司(日本ハム)も強豪とは言えない愛知県立横須賀高校出身だ。他の都道府県でも、まるで突然変異のように強豪校ではないチームからドラフト候補が飛び出してくることがある。しかしながら、ここまであらゆる高校から球史に残るレベルの選手が出てくる例は他にはないだろう。

 冒頭で紹介した芹沢は高校卒業後、社会人野球に進むとのことだが、順調にいけば3年後のドラフト上位候補となる可能性も高いだけに、今回紹介した選手に肩を並べるような大選手へと成長してくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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