小泉進次郎農水相「コンバインはリースが当たり前」発言に4人の農家が明かす本音
「2000万円のコンバイン、普通買えますか?」「どう考えたって経済的にペイしない」――。またも思い付き発言かと、業界の内外からあきれた声が寄せられている。コメ改革で自民党の支持率上昇にも一役買っている小泉進次郎農林水産大臣だが、農家たちはこの発言をどう見ているのか。4人の本音を聞いた。
***
速報「2万円給付は富裕層が得をする形に」「お米券で儲かるのはJA」 高市政権“21兆円経済対策”が「現金給付のほうがマシ」と言われる理由
速報「“あのような事態を二度と引き起こさない”というお気持ちがうかがえた」 秋篠宮さまの還暦会見を識者が分析
波紋を呼んだ発言が飛び出したのは、6月17日のことだった。
「この日小泉大臣は、経団連の筒井義信会長らと会談し、企業の農業参入の促進などについて話し合っていました。会談後の会見で、『農機をリースでまかなわないのはおかしい』などと発言し、物議を醸したのです」(全国紙記者)
実際の発言は以下の通りだ。
「『高い』と言われる農業機械だけども、むしろ例えばコンバインが今、2000万円で。米農家さんは2000万円のコンバインを1年のうち1カ月しか使わないんですよね。だとしたら普通、買えますか?と。むしろそれだったら、買うんではなくてレンタルやリース、こういったことがサービスとして当たり前の農業界に変えていかなきゃいけないんです」
「今、建設業界を見ると、重機や建機のレンタルやリースって当たり前ですよね。どこの中小企業の建設業界の皆さんが、例えばある一つの事業や案件にしか使わない数千万、数億の機械を全部持ってるかといったら、そんな形になってないわけで。農業機械も本来であれば、個人個人で持っていたら、どう考えたって経済的にペイしないのに買ってしまってる。そして売ってる。私はこういったことも変えなきゃいけないと思ってるんです」
そう、“悪しき体質を改革せねば”と言わんばかりに堂々述べたのだ。
農家から相次ぐ疑問の声
しかし発言の主はあの“迷言大臣”である。業界の内外から批判が相次ぐことになった。
「ピンとこないというか、実態が分かっていないなと思いますよね」
そう話すのは、さるベテランの専業農家。
「多くの農家さんがおっしゃっていることですが、コンバインって、秋の使いたい時がみんな一緒なんです。これまでも仲間内で『みんなで共有すればいいのでは』という案が出たことがありますが、使うときがかぶるから、結局うまくいかないんですよ」
部外者が容易に思いつくことくらい、とうの昔から考えているということか。
「例えば稲を刈るのが9月の農家と10月の農家があるのなら、そこでコンバインをシェアすればいいという考え方なのかもしれませんが、2000万円クラスのコンバインが必要な農家の場合、稲刈りが1カ月で終わらないところも多いです。農機を掃除するのも大変な上、自走もできないので、終わったら即座に引き継げるものでもない。『9月と10月で交代しましょう』という単純な話ではないんです」(同)
別の農家(50代)からはこんな声も上がる。
「兼業農家の場合、作業が土日にしかできないので、リースの注文が土日に集中しますよね。これはもう地域内で激しい取り合いになるでしょう。一方で私たちのような専業農家の場合は、収穫の時期はコンバインを丸々1カ月以上動かしっ放し。兼業農家の撤退が増え、その土地を引き継いだ専業農家が扱う農地が増えてきている事情もあります。ですから収穫期には1台を借り続けるとなると、他の農家さんとシェアするのは現実的はないなと感じてしまいます」
天候のリスクも想定しなければならず、
「たとえば台風予報が出たらどうするか、という問題もあるでしょうか。台風の被害が出る前に刈っておこうと皆が思っても、台数は限られますから、リースが主流になるとそのような事態に対応できない農家は増えると思います」(同)
[1/2ページ]


