【御社の人事、遅れてませんか?】戦略人事の要「ISO30414」を企業が軽視してはいけない本当の理由
企業人事において最も注目されている「ISO30414」(人的資本に関する情報開示のガイドライン)。「名前は聞いたことがあるけど、実際はよくわからない」「上場企業に限った話でしょう」――。そうとらえている人事部員も少なくないのではなかろうか。しかし今や、同ガイドラインも含めた「戦略人事」を軽視していては、思わぬ危機が訪れかねない時代なのだ。(安藤健/人材研究所ディレクター)
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今注目される「人的資本経営」と「ISO30414」
「人的資本経営」――人事関係者であれば一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか?
かつての「モノを作れば作った分だけ売れて会社が成長する」という時代は終わり、「人を大切にする企業こそが成長する」という考えのもと、人事の役割も変化が求められています。
「人的資本経営」とは、会社が持つ設備や資金の大きさではなく、そこで働く「人材」そのものが会社にとって最大の資産であり、人をどう育て・活かしていくかが企業の成長を左右するという考え方に基づいた経営のことです。
そして、その人的資本への投資効果を透明化するために定められたのが「ISO30414」という国際標準規格です。2018年に国際標準化機構(ISO)によって制定された、人的資本に関する11領域49項目にわたる人事と組織の情報開示ガイドラインのことです。
ようは「経営や事業戦略の実現につながる人事がちゃんとできていますか?」ということを確認するための指標です。
変わる人事の役割
今までの人事の役割とは、労務管理や給与支払いなどの管理業務を担い、経営に直接関わる部署というよりも、いわば経営を陰でサポートする部門といった位置づけでした。
しかし、今では人事は「経営のビジネスパートナー」と位置付けられ、経営機能の1つとして、企業の成長戦略に大きく関わるようになっています。
なぜこのような役割変化が求められているかというと、昔のように採用がうまくいかなくなり、残っている人材の定着をもっと促したり、教育したりして人的リソースの最大化を図らざるを得ない状況だからです。
実際、2024年度の人手不足倒産(企業が事業を運用するうえで必要な人材の数を確保できず、倒産してしまうこと)は350件と過去最多に上っています(※1)。商品のニーズはあっても、それを作る人や売る人がおらず、新規採用もできなくて会社がつぶれる時代なのです。
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