“憧れの人”さんまの前で結婚を告白　「バッテリィズ・エース」現代版おバカキャラの魅力

素直で純粋

　ただ、最近になって彼らのうちの何人かが番組の舞台裏を語ったりしている。はじめのうちは知識がなくて適当な答えを言っていたのだが、長く続けているうちに、だんだんクイズに慣れてきて、正解がわかるようになってしまった。

　しかし、正解を答えるのは自分の仕事ではないという意識があったため、番組の後期にはわざと間違った回答をしていたこともあったというのだ。いわば、彼らはただの無知な天然キャラだったわけではなく、徐々にプロとして与えられた役割をこなすようになっていたということだ。

「おバカ」や「天然」を売りにするタレントは、多かれ少なかれそのようなプロ意識を持っているものだ。それは決して悪いことではない。番組を盛り上げるためには、それぞれが空気を読んで振る舞うことが重要だからだ。

　その意味では、エースはいわゆるおバカタレントとは毛色が違う。彼は常識知らずで無知なところはあるのだが、素直で純粋なところもある。知っていることを知らないと言ったりするようなことはしない。笑いのセオリーとしてとぼけることが求められている場面でも、知っていれば知っていると言ってしまう。良くも悪くもまっすぐな人間なのだ。

　バッテリィズが全国ネットのバラエティ番組にたびたび出るようになってから、まだそれほど時間は経っていない。今のところは、制作スタッフや共演者がエースの独特のキャラクターを持て余しているように見えることが多い。既存のおバカタレントの枠に当てはめると、うまく回らないこともあるからだ。

　今後のテレビで彼の本物の素直さがどのように生かされていくかは未知数である。その扱いづらさも含めて、エースは制御不能な魅力を持っている。それは決して悪いことではない。新しい笑いの扉を開く可能性を秘めているのは彼のような人間なのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』（キネマ旬報社）の編集長を務めた。『イロモンガール』（白泉社）の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』（ディスカヴァー携書）、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』（イースト新書）、『逆襲する山里亮太』（双葉社）、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』（光文社新書）など著書多数。

デイリー新潮編集部

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